生き別れた妹を捜している青年(中村錦之助)が、旅の途中で知り合った身寄りのない少女に妹の面影を重ね合わせていく。神も仏もない世知辛い世の中で「大切な人を守ること」について語っている、人情時代劇。
映画の折り返し地点に合わせて、時間軸が10年後に切り替わる作劇。前半部では、聖人君子タイプの主人公による少女との交流劇。後半部では、剣客商売をするようになった主人公の自己実現が描かれる。
後半部における主人公の豹変ぶりと、少女のことを思うとすぐにフニャフニャになってしまう人間性のギャップが面白い。惜しむらくは、主人公が抱えることになったコンプレックスの描写が薄いため、ただの未練たらしい男に見えてしまうところ。
自分の進むべき道をしっかりと見据えて、自ら身を引いていく男の美学に、目頭が熱くなる。「Let it go!(流れに沿って進むしかない!)」の精神を含ませている、人情ドラマの決定版といえる。