お豆さん

性遊戯のお豆さんのレビュー・感想・評価

性遊戯(1969年製作の映画)
3.5
足立正生という監督は、オープニングから人の心を奪うのが抜群にうまい。散らかったアパートの一室で、複数の男女が蠢く。彼らは「鮮やかに、暴力的にやらなければ、強姦に意味は無い」と嘯きながら、気怠く緊張感のない雰囲気でごっこ遊びに勤しむ。その無常観が、「おとうさんおかあさん僕はもうつかれました、もう一歩も走れません…」という棒読みのセリフに続いて「そんなバカじゃありません!」という茶化した口調に見え隠れする。

学生運動で大学が占拠される中、暇をもてあました大学生たちが、本当の強姦を求めて街をぶらつく。社会への反抗というテーマは『女学生ゲリラ』でも取り上げられているが、日本赤軍に合流してしまうような足立正生が描くそれは、いつも衝動的なセックスとナンセンスなユーモアの連続にかき消され、無意味な暇つぶしのように思わされる。監督自身の実際の立場は分からないのだけど、本当の怒りを抱える人間として、学生運動の裏に見え隠れする無責任で子供じみた側面を批判しているかのようだ。こうした挑戦的なアプローチはピンク映画の枠を越えていて、もう少し、足立正生作品を見てみたい、深めてみたいという気持ちにさせられた。

いつものように音楽が秀逸。

2016. 79
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