酢

下郎の首の酢のレビュー・感想・評価

下郎の首(1955年製作の映画)
3.3
下郎が下郎に生まれついたことに端を発する、回避不可避な悲劇。田崎潤の忠義一途なカタブツっぷりが可笑しくて、だからこそ社会の理の中で死に至ってしまう道程が無情に浮かび上がる。

悪について考えさせられた。特定個人ではなくて、社会構造自体が悪を宿している。その中で発生する悪は、事務的で淡々としていて、当然のタスクというか義務として悪を遂行している。そしてその様はむしろ朗らかで活力に満ちてさえいる。仇討ちに来る武士たちの自然体さ。片山明彦を一蹴する様はむしろ清々しい。しかし後に残されるのは陰惨な死体とやり切れない想い。
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