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君のためなら千回でものgenarowlandsのレビュー・感想・評価

君のためなら千回でも(2007年製作の映画)
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映画は原作どおりに作らないといけないのかな。
鑑賞後、レビュー書く前にキャストのことを調べることがある。監督のことも。
悲しいことに、子役の男の子三人は、映画制作後、内容が内容だけに、対立する民族に火に油を注ぎ、命に危険が及んだので海外逃亡させられ、一人はその後帰国できたけど、一人はさらに北欧に亡命することになったとwikipediaに書いてあった。
映画以上に酷い現実。

映画の中のハッサン少年が犯されるシーンが明言されなくても、それらしく描かれていて、原作もそうだという。その点がアフガンの人びとの信仰上の怒りを買ったそう。ハッサンの息子ソーラブのことも。

多数民族の裕福な主人の息子と少数民族の使用人の息子の関係は痛ましく、原作含め(未読だけど和訳あり)、主人の息子の目線では償いきれない罪であり、ラストなんかで贖罪したつもりになるな、と私は怒っていた。

ソーラブを育てることでソーラブの心の傷がお金で解決できないことをアミールは知ることになるんじゃないかな。

『ライオン 25年目のただいま』でも心と身体に傷を負ったニュージーランドに養子になったもう一人のインドの少年は何年経っても養父母を避け、誰にも心開かず引きこもりになっていた。

原作の著者はとんでもなくハイソな超エリートで、アフガン人だけどアフガニスタンに住んでいたことはなく、生まれてすぐ大使館員の父と各国を周りほぼアメリカで育っている。アミールの目線は著者だと思う。ハッサンはアミールを有名な小説家にするための道具なんじゃ。

避けられた悲劇なので、後味わるくて仕方なかった。文学的な映画だし、アミールがこの先も苦しみ続けるのがわかったけれど、スコアはつけなかった。

映画と同じように少年たちの未来を変えてしまった作品。ハッサンとソーラブは難民キャンプから探してきた子たち。原作の通りに作ったらイスラムの世界でどうなるか、文化的背景を軽んじてはならない、それがいちばん言いたいことだったはずでは?ハッサン役は北欧に亡命したが、アミール役は引きこもりになってしまった。

再度文句を書くけど、『ライオン』(インド)でも『イーグルハンター』(モンゴル)でも『国境の夜想曲』(イラク)でも『忘れられた人びと』(メキシコ)でも思ったことは、西洋が第三世界の国々を描くとき、配慮がない。こんなにヒドイということを自分たちの価値観でストーリーづける。

本作はアフガニスタンでは上映禁止、DVDも販売禁止。
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