翔

アメリカン・ビューティーの翔のレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.7
それぞれの登場人物が、それぞれの問題を抱え、それらの問題が交錯していくという展開。展開にどんどん引き込まれていく感覚があった。
メインとなるのは、ケビン・スペイシー扮する、主人公バーナムらレスター家のそれぞれの人間関係。夫婦間にも、両親ともに親子間にも問題が存在している。さらにそれぞれが個別に問題を抱えている。
バーナムには、自身の平凡な人生に対する不満という問題がある。さらに娘の友人であるアンジェラに対して欲情してしまう。妻であるキャロラインには仕事がうまくいかず、打開のため頼った男性と不倫関係にあるという問題がある。娘であるジェーンには、リッキーという男にストーキングされ、アンジェラとは父のこともあり、関係がうまくいかない。
リッキーもその家族、特に父親も、アンジェラも、キャロラインの不倫相手も問題を抱えている。
様々な人間が抱える問題を、それぞれに与えられた短い時間で伝わるように描いており、気づいたら没入しているという構造が緻密に練られている。
結末としては、登場人物の中で問題から最も解放された人物が、自己矛盾という強烈な問題を抱えた人物が殺害するというものである。しかし、ナレーションの、美しいものに囲まれた世界では、怒りは長続きしないとの言葉通り、彼はにこやかな表情で死を迎える。そもそも勘違いから端を発した殺人であるというところも含め、皮肉あふれる良作だった。
翔