貝

アメリカン・ビューティーの貝のレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.5
はあまたエライもん観てしまったなという感覚。心の中のデリケートな部分にグサグサ突き刺さるような作品でした。何言ってんだかわかんない表現も含めてこの映画の空気感をひしひしと感じた。

タイトルの「アメリカン・ビューティー」はアメリカの赤いバラの品種だそう。赤が象徴するもの。成功、愛、美しさ、官能、狂気。「アメリカの美しさ」を象徴するように表向きの生活の華やかさ、ステレオタイプな白人アメリカ人の成功を表す美術セット。その内側にいる冷え切ったバーナム一家。といった構図。
レスター(ケヴィン・スペイシー)の長年の鬱屈生活による死んだ顔がまじで気持ち悪くてたまらん。瞬きしないし常に半開きの口もと。上がらない口角。娘の友達に恋をして、娘のボーイフレンドに悪い遊びを思い出させてもらって彼の心に感情がだんだん戻ってくる。同時に何とか留まっていたあらゆる事が一気に最悪へ向かう。いやずっと最悪だったから、最凶か。レスターが何故あそこで正気を取り戻して家族の尊厳を保てたのかまだよくわからないけど、穏やかで美しくて素敵なシーンでした。最期に彼のあんな顔がみれてよかった?というかホッとした。

それぞれの登場人物の細かい心の動きを肌で感じるような作品だった。色はかなり象徴的に使われていて、状況も心も反映されてたように思う。何度も観て何度もこの虚無にやられて何度も皮肉られたい。
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