えいがドゥロヴァウ

ウィッカーマンのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
3.8
フォーク調の朗らかな音楽がダグラス・トランブルの『サイレント・ランニング』を想起させる
70年代ですねー
国は違えど時代感があります
そしてスコットランドらしいバグパイプの音色
緊張感のあるシーンでそういった牧歌的な音楽が流れる独特な違和感は
異質な宗教的価値観や風習の中に投げ込まれた主人公と周囲とのギャップを引き立てているかのよう

敬虔すぎて童貞のおっさん刑事が失踪した少女を探しにとある島へとやってきます
しかし島民たちは知らぬ存ぜぬの一点張り
少女の母親であるはずの女性すら知らぬ存ぜぬ
「は?じゃあ誰が捜索願出したんだよ」と狐につままれる刑事
そして島民がなんか全体的にスケベ
夜は野原で集団ファ◯ク(ゲゲゲの鬼太郎の歌のリズムで)
捜索を続けるうちに、この島はキリスト教が根付かず男根崇拝の原始的な宗教が信仰されているガラパゴス的環境であることが明らかになります
どこぞの部族ならいざ知らず
同じ国の人間となると刑事の心中も幾ばくかはお察しできますが
まぁ頭が固いし高圧的な態度が鼻持ちなりません
「領主の許可を取ってから」という地元ルールも一切無視で突っ走る
しかしその後5月1日のメイデー祭りを頂点に
島民たちの異常性が白日の元に晒されていきます

劇場公開に伴ってかなりの部分がカットされたようですが
そのネガフィルムが紛失したのだそう
そしてアメリカでの配給の権利交渉の際にオリジナルバージョンのフィルムをロジャー・コーマンに送っていたことから
現存が確認されたという経緯があります
結局ロジャー・コーマンは提示金額が低かったため、上映権はワーナーに売られましたが
本作は抱き合わせの2本立てでドライブインシアターでの上映しか行われなかったそうです
ロジャー・コーマンが配給を手掛けていたらどうなっていたのか
少なくとももっと愛のある扱いを受けていたのは間違いありません
そのオリジナルバージョンも気になるところ

当時ドラキュラ役で有名だったクリストファー・リーの演じる領主の胡散臭さ
島民たちが被るキモカワな動物のお面(塀からヒョコッと顔を出す姿の愛らしさったら!)
そして何と言っても木で出来た巨大人形ウィッカーマンの不穏な存在感!
ラストの後味の悪さも非常によろしかったでございます