ジョン

フォーリング・ダウンのジョンのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
4.6
サスペンス風のコメディの皮を被ったサスペンスといったところかな。笑えるけど笑えないみたいな。理不尽なストレス社会によって心を病んだ中年男性の暴走が痛烈で可笑しくて哀しい。でもこういうギリギリでスレスレな映画は本当に大好き。

映画によくある「狂っているのはどちらか」的な話で、ネオナチの店主のところなんかはそれが分かりやすい。あそこでコメディとサスペンスが逆転した感がある。いや、直後のバズーカのところは思い切りコメディか。

それからシンプルにエンタメ性が高い。あまりにもささやかな、しかし我々が共感できることに対して主人公がぶちギレるから笑えるし、軽い勧善懲悪要素も含んでるから爽快感もある。一方で倫理観のバランスもしっかりしてる。
また、主人公を追う定年間際の老刑事の視点も中心に据えられるため、厚みが生まれるし、ラストに両者がかち合う『ヒート』的な尻上がりの展開も生まれる。終盤の緊迫感やラストの余韻を生み出す演出の切れ味も恐るべし。
そして何といってもマイケル・ダグラスとロバート・デュヴァルの名演。二人の名優が役の魅力を最大限に引き出したからこそ深みが生まれたと思う。

『タクシー・ドライバー』然り、『スーパー!』然り、やっぱりどうしようもないおじさんの話が好きなんだなあ自分は。
ジョン

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