えんてん

フォーリング・ダウンのえんてんのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
3.8
子供の頃、テレビの洋画劇場とかでやっていたのを観て、何か印象に残っていた作品。スピールバーグの「激突」の狂ったトラック運転手側の視点みたいな映画と記憶していたけど、改めて観たら全然違った。
主人公は車で暴走するんじゃなくて、映画冒頭で車を置いて彷徨い始めるんですね。ここで車を置いていってしまうのもなんか印象的で、怒りを爆発させるというよりそこから逃げ出しているように見える。
どこにでもいる普通の人が突然狂気に駆られる、というと少し違うのかもしれない。主人公の男が、実は様々な問題を抱えていたことも徐々にわかってくる。でも、そうした諸々の問題を抱えながら平穏を装っているのこそ現代の(当時の)アメリカの普通じゃない?と言われたら、そんな気もしてしまうし、それはアメリカに限った事じゃないだろう。
心の中にどんな危険を持っていて、ギリギリの状態だとしても、そこで踏みとどまっているうちは、普通の人だ (そう言いたい)。その一線を越えてしまう差は何だろう。
主人公を追う、今日が退職日の老刑事が良い感じで、彼も家庭に問題を抱えているんだけど、決して激昂することなく、逃げ出さず、辛抱強く、ユーモアと情熱を持って事に当たっていく。格好良い。
そんなに完成度の高い映画ではないけど、短髪眼鏡にワイシャツネクタイのマイケルダグラスがイライラした表情で暑そうなロサンゼルスの街を呆然と歩いてる。片手には銃が満載のボストンバッグ。
それだけで何かとても象徴的で、それだけでもこの映画の意味はあるような気がする。
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