【詳述は、『旅情』’59欄で】設定の、無理や緩み⋅極端を、寧ろ余裕の試し場とするスキル(伊藤雄之助のこんな非情なだけの役も珍しくて、光ってる)。

卑屈な小悪党の伊藤雄之助とイノセントな正しさを持つ田崎潤の間を行き来する
清濁併せ持つアラカンと藤田進のあうんのやり取りに痺れる。
イノセントであるが故に間違える月丘千秋にも、酸いも甘いも知っている粋な芸者を演じる花井蘭子にも魅了される。

少年期から10年しかたっていないのにアラカンになってしまう出鱈目さもいい感じなんだよなあ。
伝令役であり、カラスの鳴き声で危機を知らせる少年や
バットマンの執事アルフレッドのような完璧な世話をする老人との自然なやりとりもたまらない。
この島抜け直後からあるアラカンのネットワークの出鱈目さといい、映画を見た爽快感がたまらない。
ボンドもヒロインも敵もみんなメンタルをやられている『007』の新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の陰鬱さ・退屈さとは対照的！

アラカンを始めとした当時の新東宝のスター俳優たちが出すぎ。江川宇礼雄伊藤雄之助親子らによって横領の罪を着せられ切腹させられたオトン（高田稔）の復讐劇。伊藤雄之助があまりにも悪人すぎて印象的だし金語楼も珍しく小悪党を演じているのもポイント。アラカンを適と誤解する月丘千秋や惚れて匿う花井蘭子、女性陣が華を添えていて良かった、ラストが切ない。

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