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肉の蝋人形の消費者のレビュー・感想・評価

肉の蝋人形(1953年製作の映画)
3.8
・ジャンル
サイコホラー/ミステリー

・あらすじ
ニューヨークで展示館を営む蝋人形師のヘンリーは美を追求し歴史上の人物を再現した作品群へ我が子の様に愛を注いでいた
客足もそれなりに盛況で彼は満足していたのだが出資者であるマシューは違った
利益を優先しショック路線の展示を求めるマシューをヘンリーは拒絶
作品を売る事で出資金の回収を図り、訪ねてきた美術評論家ウォーレスから良い返事を得る
だが彼はエジプトへ発つ為に3ヶ月後に相談は持ち越しとなった
待つ事を拒んだマシューは保険金目当てに館へ放火
しかしその後、彼は突如として殺されてしまう
更に犯人である怪物の様な形相の男は若き下宿人の美女キャシーを殺害し遺体を盗み出す
一方その頃、辛うじて火災から生還したヘンリーは新たな蝋人形館を建てようとしていた
帰国したウォーレスに出資を受け開かれたその場所は以前と打って変わって彼が嫌っていたはずのショック路線であった
恋人スコットに連れられ館を訪ねたスーはそこで驚くべき物を発見する
それはジャンヌ・ダルクの蝋人形だったのだが亡きキャシーに瓜二つだったのだ
ヘンリーによれば新聞に載った写真を参考に弟子に作らせたという事だったがあまりにも似ていた事から彼女は疑念を抱き始め…

・感想
‘33年の同名作品と同様にチャールズ・ベルデン作の未公開の三人芝居である戯曲「The Wax Works」を映画化した作品
登場人物の名前や設定等は変えられているが大筋のストーリーはほぼ同じ物となっている

’33年版は王道の古典的ミステリーホラーとして秀逸だった一方で少々無駄が多くもあった
対して‘53年版の今作は無駄を極限まで省き台詞の忙しなさも無くなり静かに淡々と話が進んでいくのでかなり観やすい
加えて美の追求心と利益が必要な現実の間で歪に揺れ動き狂ってしまった蝋人形師ヘンリーの人物像は’33年版のイワンよりも現実味がより強くおぞましい
端々で口にされる芸術哲学も凶行に直結した内容で何とも言えない気味の悪さが良かった
協力者の存在もそれぞれの特性や背景がリアルで重たく素晴らしい

他にも主人公スーが恋人スコットと訪れたキャバレーのシーンは生きている女性もまた人形の様に扱われていると示唆する様で印象的だった
この時代においてもそういうフェミニズム的表現があったんだなぁと嬉しい驚き

一方で‘33年から20年経っているとはいえいわゆる切株描写はなく、それを補う加害描写もソフトめなので現代の感覚で観ると多少物足りなかったのは事実
特に’33年版でも見られずじまいだった蝋人形師が自らも蝋に突き落とされてしまう場面で蝋人形と化した姿がまたも見られなかったのが残念
それがあるだけで大分、恐怖が増強されるのになぁ…

同じ原作を映画化した作品は残り一本
しかしストーリーは原作に忠実な物ではなく別作品となっている様なのでそれが吉と出るか凶と出るかが気掛かりかな
それなりに有名作品なので面白いとは思うけども
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