MasaichiYaguchi

王様のためのホログラムのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

王様のためのホログラム(2016年製作の映画)
3.3
サラリーマンの誰でもが島耕作のように出世出来る訳もなく、また、その対極にある「釣り」を何よりも優先する万年ヒラ社員の浜崎伝助のような生き方も別の意味で難しいと思う。
人生谷あり山あり、「盛者必衰の理をあらわす」ではないが、どんなに勢いのある人や企業でも、何かの要因、強力なライバルの出現、信頼損失、方針や考え方が時流に合わなくなって支持されなくなった等で凋落してしまう。
本作の主人公アラン・クレイは大手自動車メーカーの取締役だったが、会社の業績悪化の責任をとって会社を解任され、全てを失ってしまう。
それでも娘の養育費を払う為にIT会社に転職した彼は、サウジアラビアの国王に最先端の映像装置「3Dホログラム」を売り込むよう業務命令されて現地に飛ぶ。
アランが乗り込んだ現地は、一発逆転の売り込みとは裏腹に仕事が出来る状況ではなく、正に“島流し”状態。
そんな状態なのに更に鞭打つように毎日上司から責められて心身共に疲弊してしまう彼だが、世の中「捨てる神あれば拾う神あり」で、意外なところから救いの手が差し伸べられる。
本作のトム・ティクバ監督が、「唯一このアラン役を演じさせることが出来るのはトム・ハンクスだ」と言い切ってしまえる程に、文化や宗教、言葉も違う異国の地で戸惑い、四苦八苦する中年男をトム・ハンクスがペーソスを交えて演じていて思わず共感してしまう。
果たしてアランは「3Dホログラム」の売り込みに成功するのか?
この作品を観ると、改めて「人間到る処青山あり」と思えてしまいます。