イチロヲ

ミッドナイトクロスのイチロヲのレビュー・感想・評価

ミッドナイトクロス(1981年製作の映画)
3.5
野外で音声素材を収集する音響技術者が、目前で発生した交通事故の車から、ひとりの女性を救出する。音響効果を担当する人間の推理劇を描いている、サスペンス・ドラマ。

何よりも、今では見られなくなったアナログ時代の音響機材を駆使しているところに関心が高まる。テープに記録された素材を職人の手で操りながら、どうにかこうにかヒントを見つけ出そうとする。その手際の良さが、とてもカッコいい。

ナンシー・アレン演じる娼婦は、基本的にアホの娘なのだが、アホなりに考えて、アホなりの答えを出そうとするので、つい応援したくなる。だが、他のレビューには、アホっぷりに終始イライラさせられるという意見もチラホラ。非常に残念でならない。

往々にしてデ・パルマ作品は「撮影するカメラの存在」が頭の中に入ってきてしまい、興を削がれるという難点があるけれども、「敗北の美学」を語らせたら天下一品なのは揺るぎない事実。本作のラストも、切なくて悲しくて、そして「美」を感じさせられる。
イチロヲ

イチロヲ