SANKOU

乾いた花のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

乾いた花(1964年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

全体的に虚無感の漂う作品で、アヴァンギャルドなテイストを感じさせるカメラワークが印象に残った。
村木は敵対していた組の兄貴分を殺して刑務所に入れられていたが、出所してみれば対立していた組とは手打ちになっており、どことなく居づらい雰囲気になっている。
親分同士もすっかり仲良くなり、どことなく腑抜けたような調子だ。
生きていることに無意味さを感じている村木は、賭場で一人の若い女性に出会う。
明らかに場違いな雰囲気を醸し出している冴子と名乗る女性は、大胆な賭け方で賭場を渡り歩いている。
村木と冴子はお互いに惹かれ合っていくが、恋と呼べるほどロマンチックなものではなく、何かお互いの人生に共鳴した、ただそれだけの関係のように思える。
とにかく村木にしても、冴子にしても何を目的に生きているのか分からない。
ただその場の熱を逃がしたくないばかりに、刹那的に生きているようにも感じる。
夜の道を助手席に村木を乗せて狂ったように暴走する冴子の姿が印象的で、いつの間にか横を走っていた男が運転する車とデッドヒートを繰り広げている。
そのあまりのクレイジーぶりに、相手の男も冴子も大笑いするが、村木だけはどこか冷めた目をしている。
村木と冴子が身体の関係を結ぶシーンはない。
ただ冴子のために村木は賭けの場所を用意するだけだ。
何も守るものがない村木は、敵討ちのために新たに台頭してきた今井組の親分を刺し殺す任務を引き受ける。
そして自分が親分を刺し殺す姿を冴子に見せつける。その一部始終を真っ直ぐな瞳で見つめ続ける冴子。
刑務所の中で村木は冴子の死を知る。麻薬に手を出し、明らかに危険な葉という男と親しい関係になった冴子。
冴子は何か自らの人生を生き急いでいるような女性だった。
物語にはあまり惹かれるものがなかったが、映画全体に漂う虚無的な空気感は良かった。そしてこの映画の魅力の大半は、冴子を演じた加賀まりこの可憐な存在感にあると思った。
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