このレビューはネタバレを含みます
ダメな男だらけが登場するなかで、ひとりだけ、ちょっと粗野だけど優しい王子さまみたいな男がいるんですが、彼はすでに死んでいる存在。"なおこ"の学生時代の淡い夢。
というのが、この映画でいちばんのサプライズであり切ない要素なんですが、彼は"なおこ"が精神的な患いから生んだ妄執なのか、それとも霊的な存在が見えるのか、そこは断言できず、少なくとも"なおこ"にとって「ほんとう」だったのは本当なんでしょう。
ダメ男に引っかかる恋愛体質の女だらけの群像劇。パーマネントで陰茎の話ばかりするおばさんたちを筆頭に、お世辞にも「善人」だらけとは言えない田舎町で、それでもみんな一生懸命生きている、前向きなパワーを感じる映画だった。
だからこそ、冒頭のぼんやりした幻想要素が際立った。良い映画だった。
菅野美穂演じる"なおこ"の、儚げというより揺らいでいる演技は終盤で納得した。文字通り夢と現実を行き来してたから。
幼い"なおこ"が母親に言った「自分がいるよ」は、そのまま"なおこ"の娘が母親のもとへ行くシーンと重ねられる。
セリフ無しで菅野美穂の表情の演技だけで〆るラストが印象的で、ひさびさに邦画で「語らない演技」を見た気がする。視聴後に「桐島〜」と同監督と知って納得。