かなり悪いオヤジ

パーマネント野ばらのかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

パーマネント野ばら(2010年製作の映画)
3.7
「ここいらの女はみんなあ狂うちゅー」フィリピンパブを経営するみっちゃん(小池栄子)の台詞は、西原理恵子が描く原作漫画にひそんじゅー“狂気”を端的に表現しちゅー。“パーマネント野バラ”に“パンチ”をあてにくるオバチャンたちの話題は、男のチンポネタばっかり。幼なじみのともちゃん(竹脇千鶴)は男運が最悪のうせにホレッぽう、ギャンブル狂いの男は借金まみれで現在失踪中や。従業員のフィリピーナを妻がいる目の前で口説くダラちんの旦那を、嫉妬にかられみっちゃんは車でひき殺そうとする。

唯一まともそうに見えるなおこ(菅野美穂)は、母親(夏木マリ)の経営する美容室を手伝いもって、一人娘のももを女手一つで育てるシングルマザーや。やけんど、そがななおこにも高校の化学教師をしちゅーカシマ(江口洋介)という秘密の彼氏がおって....そう、吉田大八監督は高知のとある漁港の女たちを、みな男なしでは生きていけんインフォマニアックな狂人として描いちゅーのや。『哀れなるものたち』のエマ・ストーンのように。

やけんどこの映画に限らず、高須委員長のパートナーとしても有名な漫画家西原理恵子の描く人物には妙なリアリティがある。そりゃ、故郷土佐でハチャメチャな家庭で育った西原自身の生い立ちがそのまま反映されちゅーきに違いない。こがな家庭で育ったら誰じゃちそうなるぜよ、ってくらいに狂いまくっちゅー家庭ながや。なんて自分は不幸なんやろ、と悩んじゅー君も今現在の生活が天国に思えるぐらいのちゃがまりっぷりや。西原の漫画(一作も読んだことはないがじゃが)に漂う妙なカタルシスを、おそらくそれが原因ながや。

暴力と貧乏にまみれた西原理恵子の人生が、漫画の大ヒットにより好転したかに思えた矢先、俳優業をしちゅー娘がマンションのベランダから飛び降り自殺未遂をはかるという事件が西原一家を襲うのや。本作に登場するももちゃんに代表されるキャラに、自分がネタとして断りものう勝手に使われたことに対する長年の嫌悪感が原因らしい。まさに、身内の狂気をネタにしちょった業がめぐりめぐって、娘の人生にも影響を及ぼしちょったのや。

映画はラスト、一見まともそうに見えたなおこが、最も狂うちょった(パーマネントのばか?)真実を見せつけて終幕する。狂気のはてにその手に掴んだ幸福がやがて“まぼろし”に終わることを、監督の吉田大八も、そして原作漫画家の西原理恵子もまきっと気づいちょったに違いない。