平田一

ナンバー23の平田一のネタバレレビュー・内容・結末

ナンバー23(2007年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

数字にしてもなんにしても、人って常に結びつけたり、こじつけるのが巧いから、劇中に出てきた台詞(「『23』も君が探すから見つかるんだ」)はまさに真理だと思う。そんな映画のコンセプトは「連想ゲームもの」であり、デヴィッド・クローネンバーグの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の「罪を犯した人間の後日談」といえるかも。

もっともそれが面白かったら、言うことはないんだが…

ジャンルとしてはファンタジー風味のサイコ・スリラーで、虚構と現実が行き交ってて、そこは悪くなかったです。そもそもウォルターが遭遇するネッドって犬にしても、果たしてホントに現実なのかどうかも非常に怪しいし、映画自体もそこに合わせて虚実をはぐらかしているし…

あとこの映画におけるもう一つの見所は、前科者が直面する「再犯の予兆」というのを掘り下げて、映画のなかで描いていたことです。

罪を犯した人間が社会復帰をしたあとに、どうやって再犯を防ぐことが出来るのか? 同じ轍を踏まないだけが回避への道なのか? 抑圧が再犯を招かないと言えるのか? そこを結構踏み込んでいる作品に感じられ、

本の再来=呼び起こされる罪と衝動

に見えました。

終盤のウォルターの罪悪感と後悔は『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に通じるものを見ましたし。

が、著者の正体がそこっていうのは安直ですし、仮にもそれで行くとしても、終盤に明かすのは…『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は正体を中盤に持ってきたのが良かったし、ディカプリオの『シャッターアイランド』もひと捻りがありました。

けどこれはウォルターが疑いを持たなすぎて、しかもその語り口が色々とイマイチです。そもそも大事な小説内本編の内容がただのSM殺人ものってマニアックすぎません? それにジム・キャリーのベッドシーンって誰得?

でもこういう作りって、未見だけど『ノクターナル・アニマルズ』って作品も扱ってたし、やっぱりこのアプローチって面白いのかも。機会があったらそっちの方も観る時間を作りたい。

まとめると、もっと色々出来そうな映画かと。ジム・キャリーが演技派なのは今更語らずとも分かる。けどやっぱりこの人は『マン・オン・ザ・ムーン』のように陽と陰を同居させてるお芝居が良いですよ。

この映画は陰と陰しか扱ってないんだもん(個人的な見解です)。
平田一

平田一