平田一

ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金の平田一のレビュー・感想・評価

4.1
1994年にマイアミで実際に起こった誘拐・殺人事件を映画化した犯罪映画。米マイアミ・ニュー・タイムズが1999年に掲載した犯罪記事を、かねてから映画化に向けて企画を練っていたマイケル・ベイ監督(『アルマゲドン』『パール・ハーバー』)が手掛けた初めての“小品”。

1994年。アメリカン・ドリームを目指し、ジムで働くボディビルダー・ダニエルは仲間たちと常連の大富豪から全財産を巻き上げる。しかしすべてを無計画に、行き当たりばったりで起こしてしまうダニエルたちは事態を悪化させていき…。

『パール・ハーバー』より以前、2000年から本企画を撮りたがってたベイ監督の、情熱がしっかりと形になっていましたし、一部始終を冷静に、巧妙に掘り下げているバカ映画に仕上がっていたのが大変ビックリです。元々『ファーゴ』や『パルプ・フィクション』などといった作品やコーエン兄弟の大ファンとインタビューで語ってたのを雑誌で知って、どんな映画になるのかワクワクしてました。

そしたら一見、ベイ監督らしい脳筋案件と一歩引いた視線を使った犯罪映画になっていて、コミカルよりも冷たい笑いに溢れて面白かったです。まさに事実は小説より奇なりを行っていましたね。

特にビクター・カーショウのキャラクターが良かったです。一見イヤミな大富豪のおっさんなんだと思っていたら、彼は彼で努力を重ね、今日まで成果を出してきた、ダニエルたちと何ら変わらない人間なことでした。ダニエルも金はないし、確かに逼迫してますが、ダニエルも仲間たちもここまで積み上げた筋肉が彼らがコツコツ積み上げてきた“立派な成果”であることを、説明を最小限にちゃんと描いていましたね。

で、このジョークのような実話を基にした作品、よく見ると“思い込み”も背景に感じました。勝手にビクターを悪人だと決めつけるダニエルも、被害にあったビクターにまともに取り合わない警察も、すべては他人を知った風に語っている人間が、マヌケな事件をマヌケどころじゃ済まない泥沼にさせた。劇中の終盤でエド・ハリスも言ってますが、

「もっとも重い罪はバカだったこと」

そして思考放棄も重い罪であることを、この映画でマイケル・ベイは描いていると思います。

ここからメジャーなマイケル・ベイとはひと味違うもう一つのマイケル・ベイが生まれだした点でもとても良かったし、次のドラマ作家としてのマイケル・ベイも期待です!
平田一

平田一