すきま

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!のすきまのレビュー・感想・評価

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公開時、同行した友人共々ほぼ眠ってしまい、前に座る友人のわたしと同時に揺れる頭だけが記憶にあった。20数年ぶりに全部通して観られてスッキリ。
カラーよりも天使目線モノクロ映像の方が美しく感じたけれど、中庭空間でのカラーの空中ブランコ場面はとても良かった。最後手前の場面とも呼応している。
ゴルバチョフの「一瞬なのになぜ生まれる」「運命は知らない方がいいと思う」「統一は血と鉄で鍛えよと言うが、我らは愛をこそ道しるべとしよう」「皆がそう信じなければならない」が、今見るとより印象的で、映画の要約みたいだし現状をも予言している。
並行してロードムービー3部作も見たので、ナチスドイツの影を引きずっていることを、映画のどこかに出すようにしてきた人だ、と分かった。批判する以前にまず我々の内側にそれがあったし未だにあるね、という感じの非常に抑えた表現。
狡さへ流れがちな人間の弱さを描きつつ、根本的には人生を祝福している。そうでないと、生きていけないから。
シリーズ前作でヌーヴェルヴァーグ的な『ベルリン・天使の詩』よりも、時期の近い『夢の涯てまでも』に似た、やや荒唐無稽でファンタジックな冒険譚がガンガン展開して、ドイツ語・英語・ロシア語が入り乱れる。
印象に残るのは『天使の詩』の方だけど、これを作る必要があったのも分かる気がする。
「ビジネスはビジネスだ、俺達がやめても誰かがやる」の行き着く先を、この映画でも結局完全には否定できてない気がする。そこがリアル。
ルーの「Why can't I be good, Whe can't I act like a man」は、そのままの意味ではなく、問い自体に無理があることも歌っているように感じた。
元々が脆い人間が、完璧を目指すと破綻する。何なら出来てどうすれば最悪なことをせずにいられるかが重要ってことではなかろうか。
天使達の状況、悪事に手を染めたり傷ついていく人間をただ見守り光を見せようとするしかない、というのが、芸術や映画に何ができるかを描いているようにも感じた。
いつか、エルサレムを舞台に天使シリーズ三作目を撮ってくれたらな。
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