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海と毒薬のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

海と毒薬(1986年製作の映画)
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九大医学部の米国捕虜生体解剖事件がテーマ。原作はクリスチャンの遠藤周作の同名小説。

医師の倫理観を問う作品だが、腐敗したヒエラルキーの象牙の塔と、ひたすら残忍な軍部を背景に置き、現場医師が倫理的な行動を取ることが難しいように描いている。

しかし、その「日本的組織の構造」と「個人の倫理観」は別ものと捉える米国の審議官には理解不能な事件であった。なぜかを医師に聞いても米国人には理解出来ないことばかりであった。

当時、九大医学部はそれほど戦争被害を受けておらず、戦争の最前線の狂気はなく、日常生活はそれなりに送れていた。

私は今、日本人の残虐性を考えさせられている。ひとりひとりは、とくに医師は道徳的で倫理観ある職業だ。「上からの命令に口答えできない」が、理由になりうるのか。

集団から突出した行動や意見を述べられない集団主義の恐ろしさ。集団が極端な方向へ進んでもそれを止めることができない。個人が飲み込まれ消え去られ匿名になり責任が分散する怖さ。仕方ないことなのか。

同じテーマのNHKドラマ「しかたなかったというてはいかんのです」も観た。医師の倫理観の掘り下げ方は不十分だったが、戦時でなくても見ないふり止めなかったは同罪で、集団の圧力から脱して物言う勇気は大切だと思う。

あえて点数はつけませんでした。
観るべき作品だと思います。

⚠️イデオロギーに関してのコメントはご遠慮ください。
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