千利休

1900年の千利休のレビュー・感想・評価

1900年(1976年製作の映画)
5.0
人生ベスト。これより素晴らしいラストを知らない。そして、この作品はそれまでに存在した全てのイタリア映画を総括しているようにも思える。ネオリアリズモがあればフェリーニがいて、もちろん自らのこれまでに築き上げてきた作家性も色濃く反映されている。内容としては長編大河ドラマ、壮大なスケールで描かれる叙事詩といったもので、アンゲロプロス『旅芸人の記録』が想起されるが、それよりも長い5時間16分という長尺。しかし、映画鑑賞を趣味にしたての頃に初めて観たときに感じるであろう『ゴッドファーザー』や『牯嶺街少年殺人事件』ほどのストーリーの複雑さや登場人物の多さによる理解の難しさはなく、描かれているものは終始一貫していて分かりやすい。とはいえ、特に中盤に顕著なのだが、なにか示唆的な、もしくはメタファーとなっていると推測できるような表現が多く見受けられ、その解釈は色々できて楽しい。なにより、派手さはなくとも画面は常に刺激的だし、ストーリー自体はサクサクと進めてくれるので、歴史物に苦手意識がある人でも飽きを感じる瞬間はないだろう。ところで、アンチファシズムを表明しているとはいえ、その悪の描き方が少々過剰に思えてしまったきらいもあるのだが、チャップリン『独裁者』から変わらない手法でああストレートに訴えかけられると全ては正当だと思えてくるし、なによりもそのメッセージは現代にも通ずるもので色々と考えさせられてしまう。それにしてもサザーランドの名悪役ぶりよ。最恐である。

※この作品のモリコーネのスコアも素晴らしく良い。というか、良くないケースが無いが。
千利休

千利休