masat

レネットとミラベル/四つの冒険のmasatのレビュー・感想・評価

3.0
ノッてますロメール、67歳!
『緑の光線』撮影終了後、編集をほったらかして衝動的に16ミリで撮り始めてしまった作品であるとか。
それも解る気がする。その『緑の光線』は、映画としてちゃんとしているから、いや、ちゃんとしてしまったから、監督本人は寧ろ肩が凝ったのでは無いだろうか。いつもと違う!と、思ったことだろう。だから16ミリカメラを持って、素人の女の子(?)を二人連れ、人里離れた田舎に行って、一からやり直すかのように、即興と素人と自由に塗れたのだ。その屈折したロメールが、チャーミングである。
さらに言うと、その『緑の光線』も本作も、頗る傑作なのだから、憎たらしい。

『緑の光線』そしてその前の『満月の夜』の反動だ。アダルトな世界観とその突出した完成度を壊すべく、よりにもよって10代の女の子まで対象年齢を下げ、“まだ始まっていない”都会のネズミと田舎のネズミの出会い、そこから始まる目の前の、すぐそこにある大冒険が始まった。
夜と朝の間のマジカルな10秒を感じた二人は、街へ出て、カフェの怪人ギャルソンや、小怪盗、そして小悪党画商を相手に大冒険して、あっと言う間に終わってしまう、ラストまで小粋に小気味良く、もっと観せて!この子たちどうなったの!?と思わせる幕切れが、これまたロメールの捻くれた気質、いや、これぞ自由。だからこそ、後を引く。

ホント、この二人は瑞々しい。生き生きとしている、とはこう言うことなのだ!と寧ろ挑戦的ですらある、と感じてしまった。

ロメール映画最大のダメ女のミューズ、マリー・リヴィエールが、恵んで女を好演し、悪くは無いけど可哀想でも無い、駄目っぷりを披露。
同じく、ウダツの上がらないパリジャンの象徴ファブリス・ルキーニも、イイ線いってそうなのに残念な画商っぷり、いつものオトボケ顔、笑える。

恋愛喜劇と諭し6部作の合間に、気晴らしに撮った本作。
何も特殊なことをせず、その瞬間のテンションをただ映し撮りながら、(次第に出てくる彼女達の本音、本性と)観客とのグルーブ感を計算し、物語の流れと登場人物の個性を編み、右肩上がりな緩やかなカーブのあるマジカルな塊に仕上げていってしまう、リュミエールの国のマジシャン。

あ、また出ました安手のテクノのようなピコピコ・サウンド。エンドロールに浸る隙を与えない。嫌がらせか!?
masat

masat