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タクシードライバーの都部のレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.9
戦争帰りで極度の不眠症に悩まされる男:トラヴィスはタクシー運転手の仕事を営み始める。堕落した人々が集う街で孤独に苛まれる彼は、運命の相手を見つけるのだが………名匠マーティン・スコセッシの代表作。

ベトナム戦争により貧富の差は拡大し、アメリカの街に娼婦と犯罪が溢れ返った当時のアメリカ社会を舞台に描かれる逸脱者による反体制の日々と異端なる恋路── アメリカンニューシネマの典型例とも言うべきプロットですが、本作はその渦中に存在するロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィスのソリッドな人間的魅力によりそれだけに留まらない作品として完成されている印象。

気になっていた女性を初デートに誘うことになって、早々にポルノ映画館に連れていく下りで爆笑してしまったのですが、どこか世間一般の常識から外れた主人公が契機を得ることで燻っていた危険な本能が先鋭化されていく様は負のカタルシスその物。怪しく輝くネオン街のひどく退廃的な雰囲気と止まない孤独に囚われた男という構図は耽美ですらある。

抑圧からの解放として気が狂ったような度を過ぎた暴力性というものはいつ目にしても良いもので、一歩間違えれば殺す相手は違ったにも関わらずに英雄として祭り上げられてしまうという展開も味わい深い後味を残すそれで非常に良かったです。
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