スローモーション男

転校生 -さよなら あなた-のスローモーション男のレビュー・感想・評価

転校生 -さよなら あなた-(2007年製作の映画)
5.0
 本当に素晴らしい映画でした。

あの『転校生』を大林宣彦がもう一度セルフリメイクしたのですが、オリジナルは超えられないだろうと思ってたら…凄い…。

 確かにオリジナルの好き度が高すぎるのであれですが、まったくベクトルの違う作品になってる。

 ストーリーも若干違う。尾道から長野へ転校してきた斉藤一夫が斉藤一美と再開して、とある泉に二人で落ちて入れ替わってしまう。
カット割りがずっと変だし、構図もずっと斜めで撮ってる。
 最初のコメディの部分がめっちゃ面白い!蕎麦を足で踏んで揉んだりして驚愕させたり!

 とにかく蓮佛美沙子があまりにも素晴らしい演技してる。大林監督も大絶賛したらしく、もっと活躍していってほしいです!

それで後半はちょっと毛色が変わる。一美の身体が大病を患い、中の一夫はどんどん落ち込んでいく。
二人が行き着く先とは…。

 オリジナルでは「性別」の入れ替わりによって子供から大人へと成長する物語だったが、リメイクは違う。入れ替わったことで「生死」を彷徨い、生きることは何なのかを突きつけられる。元に戻ったとしても、悲しい結末が待っている。
それは大林宣彦がずっとテーマにしてきたこと。

戦争によって子供のまま死んでしまった人たち、大人になれなかった人たち。人は必ず死ぬ、でもその人の物語は死なない。誰かの心で生き続けると思う。
肉体的な入れ替りが、精神的な別れと成長へと繋がる点は非常に素晴らしかった。
「さよなら、オレ さよなら、わたし」が「さよなら、あなた」に変わったのも良かった。


最後の一夫の別れと決心、そして一美のあの笑顔と歌声には涙が堪えられなかった😢
そして大林宣彦の言葉で締められる。
「人は誰も
生きてその物語を残す
人の命には限りがあるが、
物語の命は永遠だろう。

未来の子供たちよ
今も元気で暮らしてますか?」

大林宣彦の好きな映画(今のところ)
1.転校生
2.海辺の映画館 キネマの玉手箱
3.転校生 さよなら、あなた
4.この空の花 長岡花火物語
5.時をかける少女
6.青春デンデケデケデケ
7. HOUSE ハウス