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ラム・ダイアリーのakrutmのレビュー・感想・評価

ラム・ダイアリー(2011年製作の映画)
3.4
プエルトリコの新聞社に偽りの履歴書で採用された作家を目指す男性が、ラム酒とともにプエルトリコで過ごす日々の出来事を描いた、ブルース・ロビンソン監督のドラマ映画。本作の主演であるジョニー・デップが妹とともに設立した映画製作会社インフィニトゥム・ニヒルでの初製作作品。原作は、アメリカのジャーナリストであるハンター・S・トンプソンが60年代に執筆したが1998年まで出版されなかった同名小説。執筆から出版までに何十年もかかったのは、トンプソン自身が小説の出来に満足せずに出版しなかったが、その後、金銭的な事情から仕方なく出版したということらしい。

原作者がそう感じていただけあって、映画も特に深みのあるストーリーが展開するわけでもなく、そもそも大したストーリーが存在しない。主人公の記者と現地で知り合った成金実業家の恋人とのロマンスもあるが、全く盛り上がるわけではない。ラムに溺れながらも主人公が日々の出来事を日記風に描いたような、まさに『ラム・ダイアリー』なのである。

結局、主人公を演じたジョニー・デップのカッコ良さだけが目立つ作品であり、ファンがジョニデを目当てに見る以外は、太陽が燦々と輝くカリブの街やビーチでの陽気な雰囲気を楽しむくらいが見どころだろう。登場人物たちもそれに合わせて落伍者のような描写をしているが、いかんせんこれも中途半端なのが残念。もっとハチャメチャぶりを発揮すれば、もっと面白い映画に仕上がったかもしれない。

本映画で注目すべきは、なんと言っても、ジョニー・デップとアンバー・ハードが知り合うきっかけとなった作品という点であろう。本作をきっかけに二人は交際、結婚と進むわけだが、その後の泥沼(離婚、ジョニデのDV疑惑、そしてお互いを訴えた名誉毀損裁判)は記憶に新しい。全米で中継されるほど注目された名誉毀損裁判を通じて、ジョニー・デップの DV はほぼ否定され、逆にアンバー・ハードのジョニデに対する酷い仕打ちや彼女のついた数々の嘘が明らかになった。ジョニデにとっては DV 疑惑のせいでライフワークとも言える『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズから降板させられたこともあり、製作経緯も含めて、彼にとって重要な分岐点となる映画だったと言えるだろう。
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