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ロシュフォールの恋人たちのtakのレビュー・感想・評価

ロシュフォールの恋人たち(1966年製作の映画)
4.5
 社会人になってすぐくらいだったか、「シェルブールの雨傘」を初めて観たとき何故か好きになれなかった。全編台詞が歌だということがピンとこなかったのか、当時はカトリーヌ・ドヌーブが苦手だったのか、お話が暗いと感じたのかよく覚えていないけど。でも心に強く強く残ったのはミシェル・ルグランの音楽。映画友達の強いお薦めもあり「ロシュフォールの恋人たち」を鑑賞。もう映画の冒頭から夢中になってしまった・・・な、なんて幸せな気持ちにしてくれる映画なんだろう。今まで観ていなかったことや劇場で観られなかったことを悔やむよりも、この映画に出会えたことが嬉しい。素直にそう思える映画だ。

 映画のオープニングはジョージ・チャキリスらイベント屋たちの群舞。ロシュフォールのお祭り会場となる広場へとダンスは移り、繰り広げられる恋物語の舞台に小さな街は変わっていく。ここまでのオープニングですっかり引き込まれてしまうのだ。説明はいらない、台詞すらいらない。そしてカトリーヌ・ドヌーブと実姉フランソワーズ・ドルレアックが登場する場面の”双子の歌”。彼女たちのキャラクターと映画の明るい雰囲気を象徴する見事な場面だ。

みふぁそらー、みれ、れみふぁそっそっそっれどぉー♪

何度でも観たくなる。そう思わせるのは色彩の魅力も。姉妹のドレスの黄色とピンク、街並みの美しさ。観ていることが幸福。

 ジャック・ペランが理想の女性を思い続ける除隊間近の水兵を演じている。僕ら世代には「ニューシネマパラダイダイス」のイメージがあるもので、若い頃かっこよかったんだなぁと再認識。母親役に往年のスタア、ダニエル・ダリュー。なんとも若々しい母親役で、過ぎし日の恋を語る場面は印象的だ。

 恋愛映画としても、いくつもの恋の形をみせてくれるのが嬉しい。出会いから突然燃え上がる恋。若き日の胸に秘めた恋。理想を追い求める恋・・・すれ違いを繰り返すことで僕ら観客はハラハラしっぱなし。ドヌーブとジャック・ペランはいつ巡り会うのか?とハラハラしていて、最後のカフェでもすれ違い・・・でも出会いを暗示するラストシーンが幸福な余韻を僕らにもたらしてくれる。映画には夢がある。人を幸せにしてくれる。音楽と映像の華麗な融合。そんな幸せな2時間を過ごせる映画。この映画の感動は言葉で表現するのが難しい。いや言葉はいらないのかもしれない。
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