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群盗、第七章のslowのレビュー・感想・評価

群盗、第七章(1996年製作の映画)
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これはイオセリアーニが撮った映画だろうか。ひょっとしたら、どこかの酔っ払った映写技師が、そこらにあったバラバラのフィルムを適当に繋ぎ合わせただけの、間に合わせの映画かもしれない。そんなふうに、余計なことを考えるわたしはすっかり、イオセリアーニの世界を楽しんでいる。もちろん本作は偶然の産物などではないし、カメラの向こうにあるものも、こちらにあるものも、どちらも人の業、そのものに見える。ただおしなべて、これもまたイオセリアーニらしい機知に富んだ作品だった、と評してしまうのも、一寸、いやまったく足りない気がする。最初の冗談も、あながち間違いではなかったのではないかと、そういう寄り道は心に残るものだし、残すものは選んでもいい。映画というものは緻密に考え抜かれたものであり、容易に他者を寄せ付けない、まるでエンターテイメントを放棄したような作品だって少なくない。だからこそ、映画の楽しみ方として私見は必要だと考える。わたしはこの映画についても、わからないことだらけだったけれど、傑作を観た、そんな気持ちで満たされていくのを感じた。
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