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ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地雄覇のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.7
【寄り道?横道?回り道?】

これはまた、なかなか香ばしい一本を見つけてしまいましたぞ・・・。
ジャケットを見た瞬間に「お?ジェット・リー?」とはなったんですが、タイトルは明らかに「ワンチャイシリーズ」ではないけど、でも「~イン・チャイナ」となっている。

(え?何?パチモン?いやでもジャケットは確かにジェット・リーなんだけどな・・・まさか、本人がパチモン作るとか・・・・いやいやないでしょ~・・・・え?あるの?)

これね、作品紹介を読むと、ちゃんとジェット・リーが主演しているし、主人公は「ワンチャイシリーズ」と同じく黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)だし、なんならテーマソングも一緒。
つまり「ジェット・リー×黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)」の流れを汲む作品なんですよ。
・・・なんだけど、どこか違和感が漂う。
本家ジェット・リーが黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)を演じているのに、テーマ曲だってあの曲なのに、全然「ワンチャイ」じゃないのだ。

実はここにはどうやら複雑な事情が絡んでいるらしいんだけど、どれくらい複雑なのかはよく知らないので、手っ取り早く言えば「ワンチャイシリーズ」の生みの親であるツイ・ハーク監督と主演のジェット・リーが喧嘩して、結果的にリーが主演を降板してしまったのね。
で、ゴールデン・ハーベスト社としては「ワンチャイシリーズ」を続けたいので、新しい役者を「New黄飛鴻」としてキャスティングしてシリーズを続けたってわけ。
でも、黄飛鴻に愛着のあるジェット・リーは彼を主役とした作品を独自に制作し、そして公開までしてしまったっていうのがこの作品なんですね。

まぁ結果的には「ジェット・リー」抜きでパート4、パート5は作られたんだけど、ぶっちゃけあまりパっとせず、そこでどういうきっかけかはわからないけど、監督と仲直りしたジェット・リーがパート6から黄飛鴻役に復帰したため、この「横道作品」はこれ結局一本で終わっちゃったみたい(;^_^A

にしても、これはとても評価に困る作品なのよ・・・。
確かにジェット・リーのアクションはキレッキレだし、クライマックスで見せる「酔拳」はマジでカッコいい。
因みに1978年に制作された「酔拳(ジャッキー・チェン主演)」は、この黄飛鴻がモデルとなっています(というか、ジャッキーが演じた役こそ黄飛鴻)。
そんな感じで見せ場は結構あるっちゃあるんだけど・・・・。
(どした?)っていうくらいにコメディに振っちゃってるから、「本家ワンチャイシリーズ」のテンションで観てしまうと、感情が迷子になってしまう恐れあり・・という危険な内容なんですね。

一応、黄飛鴻は実在した人物だし、今までのワンチャイシリーズも舞台設定的には中国の歴史と絡めた「硬派」なお話が多いのよ、ワンチャイって。
時折コミカルな場面もあるけど、それって「クソ真面目な黄飛鴻」が女性にはめっぽう弱かったり、弟子たちにからかわれて怒ってみたりっていう「アクセント程度」であって、物語全体の色付けではなかったはずなんですよね。

で、それを全く関係のない人たちが「パロディ」として作ったのなら全然理解も出来るんだけど、今作の悩ましいところは、主役(演者)も設定も、テーマ曲も、至る所に「オリジナル」が存在しているために、観る側としては「正規版」として観るべきなのか「おふざけ版」として観るべきなのかが全く掴めないんですね。

ぶっちゃけ「義和団事件」っぽい内容もかすってはいるけど、もうコメディ色が強すぎて、結局悪者が何をしたいのかもよくわからんし、黄飛鴻が誰を助けたいのかもよくわからんし、とりあえず中国人は獅子舞が好きだってことだけはわかったけど、あそこに「ムカデの着ぐるみ」で乱入するのはアリなん?

もう色々ぶっ飛んでいて、ところどころ(フワ~)ってなるんだけど、そのギリギリのところできっちりアクションを入れてくるのよ(笑)

んもう!それやられたら止めるに止められないじゃん!

脚が命の獅子舞に突如乱入してきた「ムカデ舞いチーム」によってボコボコにやられてしまう黄飛鴻。
その対抗手段としてムカデを突いて食べてしまうニワトリにヒントを得るところまではいいんだけど、戦う時に「ニワトリの帽子」まで被る必要あったのか?
まるでロー〇ンの「から〇げ君」のPRみたいになってたわwww

こんなノリは本家(オリジナル)では出来ないし、ワンチャイシリーズのイメージ(テイスト)にも影響するから、ツィ・ハーク作品だったなら絶対にやらなかっただろうなって思う。
いや、だからと言ってジェット・リーはこれがやりたかったん?
その辺はちょっと腹を割って聞いてみたい。

でも、ラストバトルの酔拳のくだりはなかなか面白かった。
あえて「酒は飲まない」っていう前フリをずっといれつつ、それは「修行のため」ではなく、酔ってしまったら拳法を制御出来なくなってしまうから・・っていう、人間味があるキャラクター像を入れたのはちょっと新鮮だったかな。
お酒を飲んでからの黄飛鴻は無双してたし。

僕の大好きな「ワンチャイシリーズ」とはちょっと毛色の違う作品ではあったけど、こんな緩い箸休めを本人が作っちゃうっていう勢いとか環境も込みでなかなか味わい深い作品ではあったと思う。
たぶん、もう観ないけど(^-^;


ってな感じで、先週開催した「dm的映画祭」のレビューもボチボチまとめますか(笑)
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