これは3年前に観たきり。『バーバリー・コースト』を観てエンディングが全く同じだったので思い出したけど、回復しつつあった世界情勢に重なるプレコード期特有の羽振り良さが出てた気がする。

マックス・ベアもデンプシーも好演で、弱音を吐きまくってたが試合シーンでは目つきが変わってゾクッとした。大切な人が客席からリングサイドへ駆け寄ってくるまでのアクションはボクシング映画の特権で、不特定多数者の中に身を潜めていたその人が遂に我慢できず立ち上がり声を荒らげる➝接近という単純なアクションなんだが凄くアツい。
問題のラストはずっと脳裏に焼きついてる。「クリンチしたまま離すな」

ボクシングってなんでこんなに映画向きなんだろうか。ほんと。
クライマックスのボクシングシーンは熱くなった。良くも悪くもこれまでのやり取りが帳消しに！

リングで１人、懸命に戦う男をみると、応援せざるを得ない。

本作の主人公も褒められたやつじゃない。
リング外での、手にした力の扱い方がまるで子供。
いきなり出てくるミュージカルシーンがある意味その象徴。ボクシングで鍛えたフットワークでベアのミュージカルシーンはなかなかユーモアあってよかった！主人公の軽さもよく出ている。
※バックダンサーとの体のデカさの違いが😆


ただ、戦うことを忘れない彼はリングにあがると別の人格が現れる。魅力的だ。ほんと不思議。


本作は映画の枠を越えたところがまたすごい。

当時、ヘビー級の王座になる前のマックスベアが主人公。
名前見たことあるなあと思ったら「シンデレラマン」でブラドッグスの対戦相手となる、その時の世界王者。
ベアは映画の翌年にヘビー級の世界王座に着いており、また驚くのがクライマックスでベアと対戦したのが映画と同年に世界王座に着くプリモカルネラ。
翌年世界王座を争う２人が前年映画で共演って当時のハリウッドの力を感じる😅
よっぽどギャングやんか！

その他にも歴代のチャンピオン達は体格からして本物なのだろう。ボクシングファンにはたまらないのではないだろうか。


本作はマーナロイが演技面で支える。耐える妻もボクシング映画でありがちだか、好演。
「彼の体に惚れたと思ってるの？」は名シーン😆。本作は結構ベアのセックスアピールもあり、アイドル映画っぽさも。

点数あげすぎだが、いろいろ楽しかった！

『どついたるねん』以前にアメリカで本物のボクサーを使って劇映画を作るという手法をやっていたとは、確かに見た目やボクサーとしてのしあがっていくうちに不遜になり周囲と対立していく姿は『どついたるねん』の赤井英和とダブって見える。でもそんな欠点のある彼だからこそ、最大の敵との死闘のなかで妻やサポートをする仲間との絆を再確認して立ち向かっていく終盤が一層熱くなる。そしてボクシングシーンの迫力たるや。

ボクシングで勝ち続けてのしあがっていく主人公が途中でミュージカルに参加するくだりが結構長く描かれていてこんなの必要かなと思ってしまうが、華奢な女優さんたちに囲まれながらその巨体を持て余しつつ恥ずかしそうにおどるマックス・ベアが微笑ましいのでついつい見てしまう。そしてオチがコントみたい。

ヒロインを主人公と取り合い奪われるギャングのボスはいい人そうだけれど途中で悪人になるのかと思いきや、結局はいい人だった。ラストでの彼の粋な振る舞いは見習いたいものだ。