Omizu

第七のヴェールのOmizuのレビュー・感想・評価

第七のヴェール(1945年製作の映画)
3.2
【第19回アカデミー賞 脚本賞受賞】
『キング・ソロモン』コンプトン・ベネット監督のサスペンス。『スタア誕生』ジェームズ・メイソンと『パラダイン夫人の恋』アン・トッドが主演をつとめた。アカデミー賞では脚本賞にのみノミネートされ受賞した。

ピアニストの女性が自殺を図り助け出されるが口をきかない。医師は催眠で彼女が心を閉ざした原因を探ろうとする…

アン・トッドがイザベル・ユペールにみえて仕方がなかった。たぶん『ピアニスト』のイメージがあるからだろうけど、何を考えているか分からない感じが似てない?

脚本賞はなるほどという印象の上手い構成ではあるのだが、ラストはそれでいいのか?

引き取られピアノを厳しく仕込んだ親戚の男、音楽学校で出会った音楽家の男、肖像画を頼まれた画家の男、三人の男とヒロインの関係を催眠による回想形式で追っていく。

その構成は非常に上手く、普通に面白くみられる。『蛇の穴』みたいなサスペンスのようでワクワクする。しかし終盤は三人のうちの誰を選ぶかという恋愛要素に終始してしまい、ヒロインの自我が完全に解放されたとは思えない結末を迎える。

親戚の男は『プライドと偏見』みたいなツンデレ男という設定なのだろうが、ジェームズ・メイソンという役者のせいか、ダーシーのような可愛げが全く出ておらず、単なるモラハラ男にしかみえず。そんな彼を選ぶヒロインも呪縛から逃れたようには思えないが…

構造自体は面白く普通にみられるが、サスペンスなのかラブストーリーなのかどっちつかずになってしまい納得できない結末を迎えるという点で残念。もう少しヒロインに主体性を持たせてほしかった。
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