ノットステア

セーラー服と機関銃のノットステアのレビュー・感想・評価

セーラー服と機関銃(1981年製作の映画)
4.2
○感想
曲が好き。「さよならは別れの言葉言葉じゃなくて 再び逢うまでの遠い約束」♪

リアルさはまっっったくと言って良いほどなかったけど、魅力的な作品だった。ゆったりとしたシーンもあれば、急に展開していくこともあって、緩急がつけられていた。

くさいセリフも薬師丸ひろ子の声も良かった。

以下、ネタバレあり












絵力(画力?)があった。構図と独特な雰囲気。たとえストーリーを忘れてしまったとしたも、映像を思い出すことはできそう。
たとえば、
ブリッジしながら歌って登場するセーラー服姿の星泉。最初は上空から。次の瞬間逆さまの顔のアップ。
オープニング。炎の奥で手を合わせる泉。
校門の前に並ぶヤクザたち。泉と佐久間の初対面。
魚眼レンズで部屋の中が撮影される。部屋を荒らされ、黒木を110番で呼んだとき。
暴走族のシーン。
生コンクリートのシーン。
機関銃ぶっ放すシーン。
目高組解散、屋上を上空から撮影している映像。
ふわっと広がるスカートの形。
セーラー服に赤いハイヒール。

今回の悪役太っちょも少し魅力的だった。特に太っちょの足が実は健在だったシーンである。わざわざ脚を無くしたふりをしている。脅しのためなのかわからないけど、ボスの変人っぷりにショーン・コネリー版007のブロフェルドを連想させられた。それに、地雷の上に立った泉との会話もまるでブロフェルドのようだった。爆発しても被害を受けない位置からマイクを通して会話。

死が重くなかった。あっさりと死ぬし、悲しみはするけどあっさりと次に進む。それが良いか悪いかというよりも、『セーラー服と機関銃』らしさなのか?

もともと子どもの頃に観たドラマ『セーラー服と機関銃』(長澤まさみ主演)がなんか好きだった(はず)。毎回のように組員が亡くなっていき、最後に佐久間がカタギに戻ったと思ったら死んでしまう(映画と同じ)ということだけ覚えていて、もうほとんど忘れてしまった。ドスで刺されることとかも覚えている。組員役で覚えているのは堤真一、山本龍二、中尾明慶の三人。また観たいなぁ。。。再放送しないかなぁ。



○印象的なセリフ
・泉「言わせていただきますと、ママが死んでからってものは、私はパパの娘であり、妻であり、母親ですらあったんですから、一応は。最後の面倒までしっかり見ておきたかったわけ」

・泉→浜口組関根たち「目高組4代目組長、星泉です。よろしく」

・学校の先生「退学ですっ!」

・友人「俺たちが復学の署名運動やってやっからな!」「弱気になるなよぉ!」

・黒木「あやまります。全てのことを疑うことから刑事の職業は始まるんです。嫌な稼業です。信じてます、私も、お父さんのこと」

・泉「も〜だから言ったじゃない、ガキね〜」

・友人「おれたち、そろそろ引き上げるけど。」「よかったらウチ泊まらない?部屋ならいくつも空いてるしさ」
泉「ありがたいけど、辞めとくわ。」
友人「どうして?」
泉「別に理由なんかないけどね。もう少しにぎやかな気分でいたいの。独りになりたくないわけ。独りぼっちになると、今日のアタシは浅ましく、こーんな風にね、狂ったりしそうで。こういう姿をね、人様にお見せしたくないわけ、女の子としては」
友人「わかった」
いくつも「そんなにね、簡単にわかってもらいたくないの。だってね、これは女と男の違いなんですから。YOUたちになんてわかるわけがないわよ」

・ヒコ「冷てぇ!組長、組長!」
泉「何じゃ?」
ヒコ「俺の背中で雨が降ってるようです。ダボシャツがぐっしょり濡れて、風邪ひきそうっすよ!」
泉「大丈夫。もう晴れたから」
ヒコ「えっ晴れましたか?」
泉「晴れ上がってとってもいい気持ちです!」
ヒコ「それじゃあ、スピード上げます!」

・泉「ヒコ。敵をとってあげるからね。機関銃ぶち込まれて、大事な組員殺されて、黙って引っ込んでるわけにいかないわよ。冗談じゃないわよ!」

・佐久間「組長。気をつけてくださいよ。二度とあんなむちゃ困ります。」
泉「あんなむちゃ?」
佐久間「松の木組に一人で殴り込んだりですね」
泉「ヒコのためじゃない。ヒコが殺されて悔しくないの?」
佐久間「そりゃ悔しいですよ!けど立場が違うでしょ。兵隊の補いはついても、組長の代わりきかねえんです。」
泉「冷たいのね。ひどい。そういう人だったの、佐久間さんって」

・佐久間「行きつけのバーで何の気なしに拾った女ですから」
泉「知らなかったんですか?名前。普通、知り合いになったら教え合うもんじゃないんですか?」
佐久間「普通はね。」
泉「普通じゃないのか。」
佐久間「ヤクザってもんがよく分かったでしょう。口じゃ偉そうなこと言っても腹ん中はどろどろに腐っちまってるんです。てめえでてめえの嫌なにおいにやりきれなくてもっと汚えものてめえより腐ったものにのめっていく。そうしねえと一日の終わりが切なくて遠ぼえでもしてみたくなるんですよ。オオカミみたいに。」
泉「あの人も…マユミさんも腐ってるわけ?」
佐久間「いや…。分かんねえっす。俺には!最初会った時、言ったんすよ、あいつ。あんた似てるって。」
泉「言ったんすよ、あいつ。あんた似てるって。」
佐久間「死んじまったあの人に似てるって。」
泉「死んじまったあの人に似てるって。」
佐久間「私ゃ代わりじゃねえんですか?あいつが愛した男の。」
泉「私ゃ代わりじゃねえんですか?あいつが愛した男の。」

・太っちょ「快感とは死と隣り合っているものなんだ」
泉「わかりません。わかりたくありません!」
太っちょ「わからせてあげたいねえ」

・泉「カ・イ・カ・ン」

・泉「死ねばおたくら!」

・泉「ごめんなさいね。私が組長になったばかりに組を潰してしまったみたいで…。」
佐久間「とんでもねえ。おかげで最後の一花ドンと花火みたいに咲かせることができました。死んじまったあいつらもきっと先代に褒めてもらってるでしょう。お礼申します。」
泉「やだ…他人行儀ね」
佐久間「もう他人っすよ。組がなくなりゃ…組長は元のセーラー服のお嬢さん。私は…。」
泉「佐久間さんはどうするの?」
佐久間「東京を離れてどっかの田舎町でひっそり暮らしてみようと思います。」
泉「じゃあヤクザは?」
佐久間「斬った張ったの稼業から足洗います。」
泉「ほんとに!?」
佐久間「ヤクザの世界は所詮後ろ向きです。仁義だ男だと力んでみても本音は先へ進むのが怖えんですよ。だからちっとも前見ようとしねえ。臆病なんですよ。ヤクザもんは。そのことをね、組長に教えてもらいました。」
泉「組長はやめて。もう目高組はなくなったんだから。」
佐久間「じゃあお嬢さんお元気で」
泉「佐久間さんも」
泉「約束して?しっかり堅気になるって。」
佐久間「しっかり堅気になってもう一度あのマンション訪ねます。誓います。組長」
泉「ほら、また」

・泉「この人は…ヤクザのケンカを見ていられなかったんです。放っておけば…どちらかが無駄な血を流さなきゃならない。それを承知で背を向けるわけにはいかなかったんです。」

・泉「生まれて初めてのくちづけを中年のオジンにあげてしまいました。私、愚かな女になりそうです。マル」



○あらすじ
危篤の男性。医者にできることは苦痛を和らげることだけ。獣医。犬猫病院。跡目について。遺言。
星泉。小さい頃に母親を失い、父親と二人で生活してきた女子高生。父親も交通事故で死ぬ。みなしご。
位牌に手を合わせる男性(=佐久間)。葬儀が終わり帰宅。知らない女(マユミ)が部屋の前で待っている。マユミは一通の手紙を見せる。泉の父親がマユミに送った手紙。自分に何かあれば泉を頼むという内容。
共同生活。

高校の校門に黒スーツの男たちが並んでいる。裏門から帰るように言う教員たちを無視し、自分たちの学校だからと堂々と正門から出ようとする泉。男たちは泉を待っていた。
男たちは泉を車に乗せる。
目高組。
組の構成員は4人。先日亡くなった目高組の3代組長の遺言。後継者は血縁の者から選ぶこと。泉の父親に頼むはずが、事故死のせいで4代目目高組組長は泉しかいない。
泉は断る。殴り込みで死のうとする4人。止めるために組長になる。

組長として浜口に挨拶。バカにされる。関根に花瓶の水をかける。
目高組事務所に戻る。目高組事務所に突然機関銃が撃ち込まれる。
泉は退学。
黒木という刑事。泉の父親のこと。ヘロインの密輸に関わっていた。海外出張の帰り、空港でトレーナーに轢かれて死んだ。トレーナーに向かって突き飛ばされた。つまり殺された。空港で殺人が起こった場合、十中八九密輸が絡んでいると言う。冗談はやめてくださいと泉は言う。黒木はマユミのことも聞く。手配写真で前に見たことがあると言う。窃盗、万引き。
帰宅。家の中が荒らされ、マユミも失踪。黒木を110番で呼ぶ。

組の構成員と友人が外で飲食。未成年飲酒する友人。止める泉。酒を吐き出す友人。
泉「も〜だから言ったじゃない、ガキね〜」「独りぼっちになりたくないわけ」
暴走族からバイクを借りて、構成員のヒコとバイクの二人乗り。大勢でバイクを乗り回す。しばらくセリフなし。パラリラパラリラ。無音。軽快なBGMが始まる。
ヒコ「冷てぇ!組長、組長!」「俺の背中で雨が降ってるようです。ぐっしょり濡れて、風邪ひきますよ」
ヒコに、組に入った理由を聞く。理由なんかないという。
泉「理由あり。組長の問いに答えよ。100字以内で!」
他に向いてる職業がなかったから。
ヒコ「勉強嫌い。働くのもっと嫌い!暴走族卒業して…ヤクザですわ。エリートコース一直線ですわ!」
目高組構成員たちが目高事務所模様替えをしている。ヒコの死体が事務所入り口に置かれている。

松の木組へ一人で話し合いに行く。
泉「組長同士、うそのない話し合いをしたいんです」機関銃ぶち込んだのは松の木組。その後松の木組は浜口組に止められている。
泉「それを確かめたかったんです。失礼しました」
関根「ちょ~っと待った。おい、この小生意気な小娘に礼儀をたっぷりと教えてやれ」
生コンクリート漬けにされる。
佐久間が関根に電話。関根のせがれを人質にした。
佐久間→息子の旭「しゃべってみろ、ほら。」
泉「ああ〜!ヒコ!絶対に敵とってあげる!」
関根「ストップだあ〜やめろやめろ!」

「太っちょ」について。あんなひどいことをやるのは太っちょしか考えられない。麻薬のデカい取引には必ず太っちょが関わっている。

泉に電話をかけてくるマユミ。飲み屋でマユミと泉は二人きりで再会。生きてるのが辛かったマユミの過去。薬で半分死んでいたマユミを助けたのが泉の父という話。信用しない泉。前科の話。部屋荒らした話。「(刑事の黒木は)全部あたしにしょわせたのか」というマユミのセリフ。泉の父が好きだった歌をマユミが歌う。偶然、という。
マユミ「泉、わたし、好きな男できた」「許してくれる?」
泉「マユミさん、あなた偽物なんでしょ?お芝居やめて」

萩原が泉を車に乗せ、連れ去る。萩原の目的は佐久間と泉。佐久間はかつて、人斬りと呼ばれていた。
佐久間とマユミ。佐久間が飲み屋で声をかけていたマユミ。佐久間は泉とマユミの関係は知らなかった。
萩原は佐久間に話す。太っちょの手に入るはずのヘロインが間違って目高組に。太っちょは目高組にあると思っている。太っちょは誰にも会わないと言う。頼むならマユミに頼みなと言う。マユミの父親は太っちょ。親父を嫌って家を飛出した一人娘。

佐久間と泉の会話。
佐久間「行きつけのバーで何の気なしに拾った女ですから」
泉「知らなかったんですか?名前。普通、知り合いになったら教え合うもんじゃないんですか?」

構成員の明が黒木に傷を負わせられる。黒木は機嫌が悪いと言う。「焦ってるんだよなあ~」と言う。泉に手当してもらう。泉が明の母と同じ匂いがする。家に乗り込んできた奴らに撃たれ、明は死ぬ。泉は太っちょの子分たちに拉致される。
太っちょは、泉の父親が隠したヘロインを差し出すよう命令。泉は知らない。

佐久間はマユミを頼る。話して分からないときは、太っちょに殺される。
マユミ「やめときなさい。命を捨てるようなものよ」

敏感な地雷の上に立たされる泉。
太っちょの狙い。ヘロインの中毒患者を増やし、その連中が禁断症状で七転八倒するのをゆっくり見物すると言う。
泉「悪魔…」太っちょにとって最高の賛辞。
マユミが泉を助けに来る。泉を抱きしめる。電源を切るように言う。ヘロインの隠し場所を教えるとマユミは言う。
泉と生活して、自分のふしだらさを反省したというマユミ。

マユミはヘロインを水に溶かして瓶に詰めていた。
黒木も現れる。黒木は金のために太っちょと手を組んでいた。金のためなら何でもする。ヒコを殺したのは黒木。顔を見られたからやむを得ず殺した。
黒木はヘロインの密輸人。取締官から目をつけられているのがわかった黒木。空港で黒木は泉の父親のカバンに咄嗟にヘロインを詰め込んだ。黒木が取り調べを受けている間に、泉の父はトレーラーに轢かれて死んだ。
泉の父は不審な包みがバッグに入っていることに気づき、迎えに来たマユミに渡した。
黒木がマンションに行くとマユミがいたから驚いた。
黒木は邪魔だから出て行けとマユミに言った。さもないと逮捕して、マユミを太っちょに引き渡すと。それでマユミは泉のマンションを出ていった。
黒木「まあ、なんというか一包みのヘロインをめぐってとんだ悲喜劇が起こったわけですな。」
黒木はヘロインを捜しに行く。

佐久間が泉を取り返しにくる。萩原を倒す佐久間。佐久間と泉は太っちょに追い詰められる。
泉「佐久間さん…」
佐久間「組長、マズいっすよ。敵の網に引っかかっちまったようですよ。」
泉「いいの、うれしい。もう佐久間さんと会えないと思ってたから」
佐久間「組長…」
泉「駄目よ、死んじゃ。すぐに死んでカタをつけようとするの、悪い癖よ。直しなさい」

佐久間「組長、この土壇場で…説教とは…いい度胸ですね。ほれましたよ」
泉「フフッ」

生体解剖をやり直すと言う太っちょ。これほどのいい素材をわしが手放すはずがないだろ、と言う太っちょ。
マユミが太っちょを射殺。

黒木が泉の部屋にその瓶を取りに行く。萩原が黒木を殺し、その瓶を横取り。萩原は浜口組(浜口物産)へ。黒木は死ぬ間際、泉に電話する。黒木は泉の事を好きだったと言う。
泉は機関銃を手にして、セーラー服のまま浜口組(浜口物産)に殴り込み。佐久間と政を引き連れて。政は佐久間のことが好き。
萩原は目高組を見限って太っちょに取り入ったが、今度はヘロイン土産に浜口物産へ。
泉くんが望むなら幹部にする、太っちょのシマの一部を目高組に、と言う浜口。
浜口「なんだその目は?」
泉「泉泉って厚かましいのよね。イモっぽいオジンのくせして。」
浜口「イモ?オジン?」
泉「私ケチな縄張りなんて欲しくありません。」
浜口「何だとこのガキは!」
泉「本当に欲しいものは…ヘロイン。」
浜口「何?」
泉「そこにあるヘロイン全部頂きますから。」
ヘロイン入りの瓶を撃ち砕く。「カ・イ・カ・ン」。去り際に構成員の政が撃たれて死ぬ。
ピストルをぶっ放す泉「死ねばおたくら!」

佐久間と泉は目高組を解散。泉は女子高生に、佐久間はカタギとして生きる。
泉「ごめんなさいね。私が組長になったばかりに組を潰してしまったみたいで…。」

数ヶ月後。泉は警察に呼び出される。佐久間がヤクザの喧嘩を仲裁し、刺されて死んだ。北海道から出張で東京に来ていた。
泉「この人は…ヤクザのケンカを見ていられなかったんです。放っておけば…どちらかが無駄な血を流さなきゃならない。それを承知で背を向けるわけにはいかなかったんです。」
別れのキス。

セーラー服に赤いハイヒール。ハーモニカを吹く。ハーモニカを投げ捨てる。
テーマソング。
子供たちと機関銃を撃つふり。バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン…
「生まれて初めてのくちづけを中年のオジンにあげてしまいました。私、愚かな女になりそうです。マル」



○NHKBSプレミアムの紹介文
当時10代の薬師丸ひろ子が主演、主題歌も大ヒットした80年代を代表する傑作青春映画。亡くなった父に代わって目高組の組長となった高校生・星泉が、敵対する組織との抗争や、父の死の真相に巻き込まれていくが…。赤川次郎の小説を映画化した相米慎二監督が、少女から大人へと成長していくヒロインをみずみずしく描き、とりわけ機関銃を乱射し「カ・イ・カ・ン」とつぶやくクライマックスが、日本映画史上の名シーンとなった。