紅孔雀

喜劇 とんかつ一代の紅孔雀のレビュー・感想・評価

喜劇 とんかつ一代(1963年製作の映画)
5.0
まずは、2015年池袋新・文芸座でのリバイバル上映時のチラシより。
「『食べる者にはテーマがなきゃ、ダメです』と語る食通・川島のグルメ映畫。とんかつを揚げる油越しのアングルなど岡崎(宏三カメラマン)の奇抜な撮影、クロレラ研究者など奇人たちが続々登場する川島らしい一篇。森繁歌う主題歌(「とんかつの唄」)が楽しい!」
ほとんど過不足ない解説なんですが、あえて蛇足を。つまり私にとって、それほど気に入った日本喜劇映畫の一頂點ということです。
6年前に傑作『幕末太陽伝』でタッグを組んだフランキー堺を森繁の義理の弟に配し、さらに當時、駅前&社長シリーズで常連だった加東大介、三木のり平、淡島千景、池內淳子も登場。また新顔の団令子が、登場早々フランキーと濃厚なキスシーンを演じて、コケティッシュな魅力を振り巻きます。
ここでチラシにあった「奇人」のうち、極め付けの奇人2名をご紹介。
山茶花究は、世界豚殺しコンテストNO1だが、何故か異常な清潔好き。脫脂綿で辺りを拭きまくる姿は、コロナ禍の現代を思わせます。
三木のり平は、當時、注目されていた健康食クロレラ(!)の研究者。その発明品の一つが「何はなくとも江戸緑(←紫ではない)」というのも可笑しい。
また、昔雑誌の付録についていた「ソノシート」が新裝開店レストランの記念品となっているのも時代を感じさせてくれました。駅前&社長シリーズほどに爆笑はさせないが、一流の喜劇とはこれだ、という川島監督の自負に満ちた顔が見えるようです(この年、彼は45歳で早逝。まさに早過ぎる死でした)。
なお、川島監督の好物がトンカツだったそうです。
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