都部

イヴの時間 劇場版の都部のレビュー・感想・評価

イヴの時間 劇場版(2009年製作の映画)
3.3
上映中の『アイの歌声を聴かせて』の吉浦監督の前身作。アンドロイドの実用化で変化していく倫理と社会のさなか、人とアンドロイドを区別しない喫茶店イブの時間での交流を描く。独特なカメラワーク、室内劇としてのユニークさを担保した脚本と今見返しても面白いSF作品となっている。本作では人として振る舞う事を許されないアンドロイドの苦悩を描いておりそうした人間味溢れるアンドロイドに偏執する人々の様相を、何処か暖かみあるタッチで語る構図は愉快である。
存在としてあまりに隔絶された両者の心が束の間に噛み合う場所としてのイブの時間であり、けして大事ではない小市民的な葛藤はあくまで現実と地続きの問題であるような手付きのそれで、作品またSFとしては甘くとも無二の世界観の確立という意味では非常に雰囲気作りに凝った作品であるように感じた。唯一の不満は起承転結の起承で大筋が終わりを告げて、そしてその続編が未だに無いことである
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