都部

ドラえもん のび太とブリキの迷宮の都部のレビュー・感想・評価

3.5
技術的特異点を迎えた思考能力を持つ機械の反乱の動向に巻き込まれる本作は、絶品のドラ虐が楽しめる映画であり、また当時の社会の機械による自動化への批判精神を孕んだ一作である。

序盤は正体不明のブリキン島へのバカンスの経緯がある種 ホラー的に語られ、外側に働きを掛けるTV/ブリキン島のホテルの異様な召使いロボの挙動/そして立ち入ってはならない地下室の存在と、M.ナイト.シャマラン監督の映画のような不気味さ漂う話が展開される。この異様な状況下に気付かないまま、登場人物達が子供心を優先させる流れは観客としてはハラハラさせられる。星のカービィさながらになんでも口に収容する兎のロボットが個人的に怖かった。コイツ目がイッてるんだよ。

中盤から物語の構造が発覚して、ブリキン島が浮上するシーンが個人的には映画としてのピークだったように思う。ここはカットとしても最高だ。その裏で反乱軍に捕縛されたドラえもんが電圧により拷問され、そしてそのまま事実上 死んでしまうというのはあまりにも衝撃的な展開である。のび太くんが助けに来てくれる、と叶わない妄想を水底のゴミ捨て場でしているシーンのなんと哀れなことか。

そこからのスペアポケットによる逆転劇は、劇伴の併せ方も相俟ってテンションが上がるそれで良かったですね。ただやはり旧ドラ映画の終盤は駆け足で、唐突に現れた尺の短縮化を狙ったのか分からないサンタクロースの登場が極めてノイズ。今回の事件の解決法もだいぶ物騒で、細菌兵器により狂わされたロボット達がバタバタと歌を歌いながら倒れていくシーンは独特の見応えがある。怖いよ。物語の結末に釈然としない気持ちはありますが、反乱されたらそれ以上の力で封殺してなかったことにしようというオチはちょっと笑ってしまうので好き。
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