ブラックユーモアホフマン

ピアノ・レッスンのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
4.1
初ジェーン・カンピオン。

ホリー・ハンターは目力がすごい。最近観た『クラッシュ』の時と同じような存在感。でも個人的には『赤ちゃん泥棒』みたいなチャーミングな役の方が似合う気がするんだけどな。

ハーヴェイ・カイテルは『異端の鳥』然り、色んな言語を操るな。その都度努力して習得しているのか、元々結構言語には得意な方なのか、どうなんだろう。しかし正直、この役には合ってない気がした。スコセッシやタランティーノの映画でもアウトローの役は数多くやっているけど、原住民となると……上品すぎやしないか。文字は読めないけど英語は話せるから、彼らの中でも一番知性的な人物ではあるんだろうけど、それにしても見た目が文明的過ぎる気が。

ニュージーランドが舞台になっているのが個性的な作品だと感じた。あんまりマオリの人たちがこんなに出てくる映画って、最近はジェイソン・モモアやドウェイン・ジョンソン(正確には色々種族が違うみたいだけどそこらへんは丸屋久兵衛さんの解説がないと分からない)の活躍もあって多いけど、古い映画ではそんなに知らないから。

ニュージーランドといえばサム・ニール。ちなみに『ジュラシック・パーク』と同年公開。サム・ニール演じるアイツは、まあポンコツ感もあるけどしかし普通に一番可哀想だなと思ってしまったな。

というより、大切なピアノを人質にとって卑怯な手で強引に関係を迫ったハーヴェイ・カイテルと結局結ばれてしまうなんて、いいのか!?と思ったけど、まあ監督も決してそれでいいとは描いてないか。

その証拠のラストカットか。ありゃ美しかった。良かったな。まあどっちにしても幸福にはなれない女の話だった。

サム・ニールが抱える悲壮感は『ブギーナイツ』のウィリアム・H・メイシーや『現金に体を張れ』のエリシャ・クック・Jr.を想起する。つまり本作はファム・ファタールものでもあるのかも。でも普通のノワールと違ってファム・ファタールが主人公だから「男を惑わす魔性の女」みたいな男本位の無責任に渇いた描き方じゃなくて、とてつもなく悲しげでびしょびしょに濡れた描き方なんだな。

【一番好きなシーン】
・浜辺でピアノ弾くシーン
・青髭の劇のシーン。後の展開に重なるのも良い