Toineの感想文

ピアノ・レッスンのToineの感想文のレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
5.0
【人魚姫のオマージュを感じる傑作】
言わずと知れた超名作トラウマ映画。
おとぎ話みたいな残酷で美しくて気持ちが悪い不思議な映画。

マイケル・ナイマン様の劇伴お目当てで既にディスクを購入した作品にもかかわらず劇場でもあの旋律が聴きたくて映画館でも観て来ました。
我慢できなかった。
それくらい大好きなナイマン様の音楽。
耳の楽園。
サティの曲も弾きます♡
劇場のサウンドも最高でした♡♡

海辺に置き去りにされたピアノ。
映像美が過ぎるがピアノにとって酷な環境。
それはエイダさんの辿る運命のメタファー。
終盤の西洋とマオリ文化の融合も好き。

主役のエイダさん演じるホリー・ハンターさんが華奢で小柄なのであの時代の男性から見ると一見扱いやすそうなんですけれど実は意思が超絶つよつよで一筋縄では行かない女性。
芯が強いというよりも死ぬほど頑固。
自らの意思で6歳の頃に喋るのを止めただけの事はある。
ギャップ萌えいたします。
夫のスチュアートさんは彼女を見誤っていたし理解できていなかったですね。

ハーヴェイ・カイテルさん演じるベインズさんの顔面マオリタトゥーがイカす。
ハーヴェイさん大好きなんですが今回ばかりはエイダさんにもベインズおじにも共感はできない。
けれど理解できる部分もある。
ベインズおじはエイダさんにとってピアノがどんな存在なのかどれだけ価値のあるものなのか共感し耳を心を傾けてくれていた。
スチュアートさんにはそれが無かった。
エイダさんの心が手に入らない理由を考えようともしないスチュアートさん。
そしてあんな行動に…。
彼ら3人の情動の理由は理解できる。
だけど複雑な気持ちになる。
裏切りは許さない。とはいえ19世紀の結婚は基本自由恋愛ではないからなー。
エイダさんも勝手に決められた婚姻でニュージーまで来たわけだし。
何と言ってもエイダさんのお嬢さんフロラちゃんの気持ちが私には1番わかるし周りの大人たちに振り回されて可哀想。
子供の素直さが大人たちの欲深さを引き立てていて非常に良かったです。
私はフロラちゃんの味方です。

中盤の劇中劇が凄くお気に入りです。
童話の「青ひげ」気持ち悪くて大好きなんです。
映画化されている作品で1番好きなのがカトリーヌ・ブレイヤ監督の「青髭(2009)」です。
おすすめでございます。

わざと縄に足を近づけて。
海にピアノと共に身を投げ出されたエイダさん。
何て美しすぎる光景。
あのまま泡となって消えてしまうのかしらと思った。
あれは過去との決別でありあの場所で彼女は1度死んで新しく生まれ変わったのだと思いました。
きっとこれも作品独特の美しいメタファー。
欲しいものは自分から掴み取りに行く。
やはり人生はNo pain, no gainという事で。