『これは私の話す声ではなく
心の声だ
6歳で話すのをやめた
何故なのかは分からない
でも私は私に声がないとは思っていない
私にはピアノがあるから』
「ママはこうも言ってるわ
聞く価値のあるおしゃべりは少ないって」
「大胆な意見だな」
「君も裸になれ
鍵盤幾つ分だ?」
「ピアノは君に返す
もういらん
君を淫売にしたら俺は、
君は俺を愛せないだろう」
「ピアノは返す タダだ」
「俺はピアノなんかいらん!」
「君じゃなく君の奥さんに返すんだ」
🎹
【ベインズ 私の心はあなたのものよ】
[これをベインズのところへ
彼のものだと言って渡して]
「彼女は言葉を話したか?
話したと感じたことは?」
「悪いのは俺だ 彼女じゃない」
「私は彼女の声を聞いた
ここで 私の頭でだ」
『私は自分の意思が怖い
何をしでかすか分からない
この大きな意思が』
「ここから立ち去れ
2人でだ
朝になって全てが夢だったと
思わせてくれ」
[ピアノを海に捨てて行って]
「バランスは取れてる大丈夫だ」
「壊れてるって!」
「壊れたキーは後で直させるよ」
「彼女の言うとおりだ
こいつは棺桶だ
ここに捨てて行け」
『何という死
何という運命
何という驚き
意思が正を選ばせたのか』
『時々
海の墓場に沈んだピアノを想像する
その上に浮かぶ私の姿も
沈黙が満ちる海の中で』