浜辺に置き去りにされたピアノを弾く女性、その傍らで踊る少女。この幻想的な光景が忘れられない。
スコットランドからニュージーランドに嫁いできたエイダが弾くピアノは、バッハやショパンといったクラシックではない。感情がほとばしるような、耳慣れないけれど美しく哀しみを含んだ曲(マイケル・ナイマン)。
ふと不思議な気持ちになった。19世紀半ばにこんな曲を弾く人がいるだろうか?次の瞬間に確信した。きっとこれらは彼女が作った曲なのだ、と。6歳で言葉を失った彼女は、既存の音楽では飽き足らず内なる声を旋律に乗せて自分を表現したのでしょう。
ひと言も喋らないホリー・ハンターや娘役のアンナ・パキンの演技にも惚れ惚れするし、ハーヴェイ・カイテルの存在感はもう何とも…すごい。叙情的な世界にどっぷりと浸かることができた至福の2時間*:.。.*