産まれてすぐにこの世の醜さを悟り、3歳にして自ら成長することを止めてしまった少年オスカルの目線から、ナチスが台頭しつつあるポーランドを描いた映画。
産声を上げる前にまず世の中に対する諦観の境地に辿り着いてしまうという、賢いとかそういうレベルを超越しているオスカルは、自分の意思だけで身体の成長を止めたり叫び声で物を破壊する能力を持っていたりと、主人公ながら得体の知れない力を持った謎の人物。
歳をとらない子供が主人公という童話のような雰囲気を持ちつつ、中身はエログロ一直線なドギツいシーンの連発で、妙に生々しい性描写や戦争に翻弄され死にまくる登場人物たちなど、子供の目の前でこんなことやっていいんかというものばかり。オスカル役の子は当時11歳だったらしいが、多感な時期にこんなの見せられたらおかしくなりそうだ。
一番凄かったのは、海から引き上げられた馬の頭からウナギがウジャウジャ湧き出てくる場面で、何が何だか分からないが物凄いおぞましさで頭にこびりついて離れない。
オスカルの初恋も、若き二人の淡い恋…とはいかず、デロデロの性描写に終始して爽やかさのカケラもない。幼い少年が一丁前の性欲でもって女の子に迫る様は、言っちゃ悪いが不気味なところがある。
グリム童話のような暗いテイストの童話を更にグチャグチャにしたようなおどろおどろしさのある映画だけど、ステキな場面もいくつかあって、ナチスの集会に忍び込んだオスカルの太鼓の音色に合わせて演奏が崩れていき、しまいにはナチの高官を讃えるはずだった集会がダンスパーティになってしまうシーンは、むしろさわやかさすらあった。
タイトルの素朴さからは全く想像のつかないコッテリとした映画で激しく面食らったけど、少なくとも一生忘れない映画になったことだけは間違いない。
(2019.50)