むさじー

海を飛ぶ夢のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<愛する人の尊厳死にどう応えるか>

愛する人の尊厳死という深いテーマに、正面から向き合った映画である。寝たきりの主人公の周囲には愛情豊かな人たちが集まり、その人たちとの心の交流を、群像劇風に温かく描いている。
死を望むラモンに父は悲しみ、兄は怒るが、義姉は本人の気持ちを尊重したいと理解を示し、彼の強い意志と深い洞察力、ユーモアに溢れた“愛されキャラ”は周囲の女性たちを惹きつけていく。
そして、「尊厳死を望むのは家族の愛情が足りないから」と真っ向から反論した神父の出現によって、尊厳死の賛否と愛情の有りようが微妙に絡んでくる。本人の意志を尊重するのが愛か、本人が生きやすいようケアするのが愛か。その結果、病魔と闘う女弁護士は共に死のうと約束し、思いを寄せるシングルマザーは死を「手伝う」ことになる。彼を救うことは彼を死なせることだと。
戸惑いつつも、義姉が神父に放つ一言「誰が正しいのかは分からないが、あなたはやかましい」が多くの人の気持ちを代弁している気がする。
悲しむべき結末だが救いを感じるし、重くて暗いのだが爽やかな余韻を残している。旅立ちのシーンには、言葉を超えた映像の力を感じた。
また、身動きがとれない中、表情で全ての思いを表現するハビエル・バルデムの演技に圧倒された。
むさじー

むさじー