このレビューはネタバレを含みます
検閲がどのように入り、なぜ17分ものフィルムが喪失しているのかの考察は、木下千花著の研究論文がわかりやすく、ネットにPDFが転がってる。
おもちゃ、という可愛い名前のあざとい女性が、世の理不尽に恨み言をぶつけるシーンで映画は幕を閉じる。おもちゃのやりきれなさは、現代にもそのまま通じてしまうのが切ない。この頃から人は全く変わっていないのね。
とはいえ定吉の意地汚い復讐劇にもちょっぴり感情移入してしまう。定吉は今で言う弱者男性かな。車からおもちゃを突き落とすから最低ではあるのだけど。
室内の会話を、広い画角で人物を小さく置く撮影が美しい。余計な切り返しもなく淡々として物語を溢さない。