kkkのk太郎

プライド 栄光への絆のkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

プライド 栄光への絆(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

1988年を舞台に、テキサス州オデッサにあるパーミヤン高校のアメリカンフットボールチーム、「パンサーズ」の闘いを描く、実話を基にしたアメフト映画。

チームのテールバック(ランニングバックのポジションの一つ。Iフォーメーションの時に一番後ろに位置し、ボールを持って走るオフェンスの要。詳しくはよく知らない。)であるドンのガールフレンド、マリアを演じたのは、本作でスクリーン・デビューを果たしたアンバー・ハード。

原作はH・G・ビッシンガーの書いたノンフィクション小説「Friday Night Lights: A Town, a Team, and a Dream」。
因みにこのビッシンガーさんは、本作の監督ピーター・バーグのいとこ。
小説のタイトルにもあるように、この作品は「a Town」が重要。チームを取り巻く街の姿を描くことこそが、本作の主題といっても良いでしょう。
「Friday Night Lights」は本作の原題でもあり、これは州大会のシーズンが始まると毎週金曜日の夜に試合が行われ、スタジアムに火が灯るから。

日本に住んでいるとアメフトにあまり馴染みがないが、おそらく自分と同世代の男子なら『アイシールド21』を読んでいる筈なので、なんとなくルールはわかるという人は多いと思う。
全くアメフトのルールを知らない、「QB?RB?それ何?」レベルの人だと本作の鑑賞は厳しいだろうけど、『アイシールド21』を読んだ程度の知識があれば十分にお話についていけると思います。

アメフトの人気はアメリカでは絶大。バスケや野球よりも人気があるみたい。
「NFL」というプロリーグの1年間の収入は130億ドル以上と推測されており、日本円では1兆円以上…!🤑
ちなみに野球の「MLB」が年間100億ドルくらいらしいから、金額で比べてもやはりアメフトの方が野球よりも人気が高いと言えるでしょう。

また、アメリカの歴代テレビ視聴率ランキングのトップ10のうち8つがNFLの優勝決定戦、通称「スーパーボール」。
2021年の平均視聴者数は9,200万人。コレは過去15年で最低らしいが、それでもこれだけの数字をマークしている。なお、最高視聴者数は2015年に記録した約1億1400万人だということです🤪
(ちなみに、トップ10のうち、スーパーボール以外の2つはアポロ11号の中継とニクソン大統領の辞任スピーチ。)

とまぁ、とにかくアメリカにおけるアメフト人気は異常な訳です。
DVDの特典映像で監督?が言っていたように、アメリカにおけるアメフトとはもはや宗教であり、それは高校生の州大会ですら、まるで15世紀に立ち返ったかのように、宗教戦争の様相を呈するようになる。
アメフトの州大会とはただのスポーツの枠を超えた、街と街との宗教的対立なんです。
決勝戦のハーフタイムで両校ともにお祈りの場面が映し出されたのは、意図的な表現だった訳です。

州大会ということで、始めは日本で言う夏の高校野球の地区大会みたいなものかと思っていたが、そんなものとは比べ物にならない狂気を帯びていることがだんだんと分かってくる。
州大会で優勝すると貰うことのできる金の指輪こそが、田舎町オデッサでは王冠に匹敵する程の栄光の象徴である。
だから映画中、殊更にこの指輪が強調される。
みんなこの指環の持つ魔力に操られており、コレはもう『ロード・オブ・ザ・リング』みたいなもんです。

この指輪を街にもたらすことこそが、パンサーズ(通称mojo、パワーや生命力、魅力なんかを意味する言葉だが、元々はブードゥー教における魔力を持ったお守りを意味する)の使命である、と誰もが思い込んでいる。
この指輪の争奪戦の手段として、アメフトが用いられているだけで、本当は誰もアメフト自体には感心がないんじゃないのか、と観客は感じるだろう。
ティーンエイジャーのスポーツを描いている作品でありながら、映像のトーンは暗くて陰鬱。パンサーズのメンバーや監督の苦悩が前面に押し出されており、誰も楽しそうではない。一体彼らは何のためにアメフトをやっているんだろう?と観客は考え込んでしまう。

しかし、その陰鬱さはクライマックスでひっくり返る!
街に栄光をもたらす為?違うだろっ!ただ、身体がアメフトを欲するからアメフトやってるんだ!
と言わんばかりの迫力の試合展開!反撃を開始したパンサーズのバックで流れる音楽はザ・ストゥージズの「I Wanna Be Your Dog」!
「今俺はお前の犬になりたい」という歌詞の通り、アメフトに支配された選手たちには、もはや栄光だの親との確執だの奨学金だのといったことは眼中にない。
ただ目の前の敵を潰すために命をかけるその姿に、胸が熱くなったー!
まるで長編スポ根漫画を一気に読んだかのような満足感が得られました🥰

ドキュメンタリーのようなリアリティのある映像、特に試合の映像の迫力は半端ない。反面、モキュメンタリー作品によくある、手振れのような揺れる映像が多用されるので慣れるまでは結構違和感がある。

あと、キャラクター一人一人の掘り下げがもっと欲しかったような気はする。ここは尺の問題もあるから仕方ないかな、とは思うけど。
ドラマにしてじっくりと描いたら面白そうだけどな〜、と思ったら2006年〜2011年まで、ピーター・バーグ監督自身がプロデュースするドラマが放送されていたんですね。分かってんなぁ、ピーター・バーグ。

ちょっと『ロッキー』オマージュみたいなシーンもあったりして、スポ根もの大好きな自分にとっては大満足な一本だった!
学生スポーツにまつわる悲喜交交を味わいたい方には是非オススメ!

余談だけど、大体映画に出てくるアメフト選手(大体クォーターバック)って、白人で、女にモテて、やな奴で、すぐ死ぬ。
本作を観て、ちょっとだけアメフト選手に対する偏見が消えました🤣
kkkのk太郎

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