【めしべの乱舞】
NFC上映を見逃しDVDでみたのですが、とてもよくて、その後ル・シネマの上映を知り性懲りもなく行ってみたら、更によかった(笑)。…違うんですよ、ジャン・ギャバンが!
終盤の彼の、表情の微妙な変化と、創造者としての真剣さが、大きな画面からよりズシリと、伝わって来るのですね。
「ムーラン・ルージュ」の創設物語を、ダンサー誕生を中心に。今みると、『フラガール』に少し近かったりしますね。ルノワール監督が、15年ぶりにフランスに帰って撮った作品。画面から、その喜びがにじむように伝わってきます。
見所の第一は文句なく、カンカンお披露目・初舞台でしょうね。客席と舞台の渾然一体化。踊り子達が盛大に捲るスカートは、まさしく色鮮やかな花弁。めしべにフェロモンふり撒かれ、店ではおしべでなく、虫に過ぎないのに男ども、花に群がります。
でも群がるだけでもメチャ楽しい。受精を介さぬ大乱交!それゆえ終わりはやって来ない。キリがないので、仕方なきように、カメラの方から店外に出てゆくのでした…。
しかし出てゆく前、『黄金の馬車』でもテーマだった「見る⇔見られること」の逆転現象がしっかりと、仕込まれていたのもポイントでした。あとを引きますね…。
ムーラン・ルージュといえばロートレックですが、開店までの物語なので、その後活躍する彼は出ないんですね。が、そもそも本作、企画の成り立ちとしては、この二年前にジョン・ヒューストンがイギリスで監督した、ロートレックの伝記映画「赤い風車」が世界的にヒットしたのがきっかけ、らしい。フレンチ魂でムーラン・ルージュ物語見せちゃる!という思いで既出のロートレックは出さないぞ、とした事情もあったのでは。
伝記といえば、すこし前に伝記映画が評判となった、エディット・ピアフ本人が出演して1曲披露するのも、彼女を知る人には嬉しいオマケですね。
<2010.1.25記>