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フレンチ・カンカンのくりふのレビュー・感想・評価

フレンチ・カンカン(1954年製作の映画)
4.0
【めしべの乱舞】

NFC上映を見逃しDVDでみたのですが、とてもよくて、その後ル・シネマの上映を知り性懲りもなく行ってみたら、更によかった(笑)。…違うんですよ、ジャン・ギャバンが!

終盤の彼の、表情の微妙な変化と、創造者としての真剣さが、大きな画面からよりズシリと、伝わって来るのですね。

「ムーラン・ルージュ」の創設物語を、ダンサー誕生を中心に。今みると、『フラガール』に少し近かったりしますね。ルノワール監督が、15年ぶりにフランスに帰って撮った作品。画面から、その喜びがにじむように伝わってきます。

見所の第一は文句なく、カンカンお披露目・初舞台でしょうね。客席と舞台の渾然一体化。踊り子達が盛大に捲るスカートは、まさしく色鮮やかな花弁。めしべにフェロモンふり撒かれ、店ではおしべでなく、虫に過ぎないのに男ども、花に群がります。

でも群がるだけでもメチャ楽しい。受精を介さぬ大乱交!それゆえ終わりはやって来ない。キリがないので、仕方なきように、カメラの方から店外に出てゆくのでした…。

しかし出てゆく前、『黄金の馬車』でもテーマだった「見る⇔見られること」の逆転現象がしっかりと、仕込まれていたのもポイントでした。あとを引きますね…。

ムーラン・ルージュといえばロートレックですが、開店までの物語なので、その後活躍する彼は出ないんですね。が、そもそも本作、企画の成り立ちとしては、この二年前にジョン・ヒューストンがイギリスで監督した、ロートレックの伝記映画「赤い風車」が世界的にヒットしたのがきっかけ、らしい。フレンチ魂でムーラン・ルージュ物語見せちゃる!という思いで既出のロートレックは出さないぞ、とした事情もあったのでは。

伝記といえば、すこし前に伝記映画が評判となった、エディット・ピアフ本人が出演して1曲披露するのも、彼女を知る人には嬉しいオマケですね。

<2010.1.25記>
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