垂直落下式サミング

ハウリングの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ハウリング(1981年製作の映画)
4.5
実写スラップスティックホラーコメディの快男児ジョー・ダンテ監督作品。去年の最新作『ゾンビガール』も素晴らしく偏差値の低い映画で、いまだにこんな映画を作り続けている彼のことが大好きだ。
この作品は『13日の金曜日』のジェイソンや『エルム街の悪夢』のフレディを筆頭に数々のホラーキャラクターを生んだ80年代スラッシャー映画ブーム真っ只中、“狼男”という新鮮味の無い題材でも明確な戦略の上で工夫を凝らせば新たなホラースターたちと対等に勝負できるんだと証明した作品だ。当然と言えば当然の話だが、ドラキュラ伯爵やフランケンシュタインの怪物と同期の狼男は、当時既にホラーキャラクターとしての耐用年数を過ぎていた。しかし、本作は狼男を誰もが認知しているからこそできる大胆なアプローチでもって、半世紀前に誕生した物語を現代に語り継ぐことの意義を示している。なかでも特殊メイクと高度な特撮効果を駆使した変身シーンは異質な生物感の表現に成功し『狼男アメリカン』に影響を与えたことは有名。人から怪物に変身するメタモルフォーゼシーンこそが他のモンスターとは違う狼男にしかない魅力だろう。変身をいかに鮮烈に描くか…それがすべてであり、それこそが最大の見せ場なのだ。筋肉が異様に膨らんで全身の皮膚細胞が崩れ落ち、その下から新たに獣の毛皮質が組織されると同時に骨格が変容していく異形がその姿を露にする表現。おぞましくもアメイジング。呪いの咆哮とともに復活を果たす往年のスターに対する愛とリスペクトに満ちた幸福な作品だ。