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黒い牡牛のくりふのレビュー・感想・評価

黒い牡牛(1956年製作の映画)
3.0
【グラディエーター】

ツタヤ発掘良品にて。一昨年の東京国際映画祭で上映されましたね。ダルトン・トランボ絡みで気になっていたのですが、ようやくDVDですが、見られました。

見てみれば真っ当な子供映画で、終盤まではべつに…という感じでしたが…トランボ魂あふれるラストが、なかなか!

強いがため闘牛として売られ、大観衆に見つめられ血闘に孤軍奮闘するも、最後は殺されるさだめ…50年代当時、赤狩りで追われる自身を、この牡牛になぞらえたともいわれますが、あの観衆の叫びは、彼自身の願いでもあったのだろうな、と思いました。

ジャック・カーディフによる撮影が素晴らしい。これは劇場で見たかった。特にメキシコ・シティに入ってからの臨場感。当時は、ここまで徹底して現地ロケするのは珍しかったのでは。最後にメキシコの皆さんへサンクスメッセージも出しているし。

当時のアメリカ映画で、オールメキシカンの物語、というのも珍しいと思った。そもそも、トランボが赤狩りを逃れるためメキシコに行った際、闘牛を見て着想したものらしい。まあ、人物みな英語喋っているし、闘牛への視点も異邦人のものでしたが。

あと、主人公を演じるマイケル・レイ君がメキシコ系に見えず、現地女性と結婚した白人一家の話なのか?と初め一瞬、混乱しました(笑)。

…本作、興行としては失敗し、大赤字だったようですね。まあ、白人は見たがらないでしょうコレは。

闘牛シーンを、子供映画だからと甘くせず、しっかり撮っているのがよかった。骨を感じる映画で、トランボ魂が脈打っていてそこが、大人が見ても面白い。

『トランボ』では本作に触れていたっけな?見てから時間経ってしまい、投稿もしていなかったので、久しぶりに再見したくなりました。

ちなみにマイケル・レイ君はこの後、『アラビアのロレンス』にも出演しているらしい。ああ、あの少年かな?と思い当たったので、そっちも再見したくなってしまった。

<2018.7.29記>
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