ジジイ

長江哀歌(ちょうこうエレジー)のジジイのレビュー・感想・評価

4.0
ジャジャンクー監督弱冠36歳時の作品。ベネチアで金獅子賞受賞。山西省から元妻、夫をダム建設で水没が進む街奉節に探しに来た二人の男女の物語。三峡ダム建設で失われたものを見て「自然美があり他方にはある種の破壊の美がある」と語った監督の言葉どおり、圧倒的なスケールの自然とそこにへばりつくように営まれる人間の暮らしが渾然一体となって美しくスクリーンを埋め尽くしている。その対比がどこまでも強烈でまたもの哀しい。「帰れない二人」同様シリアスな人間模様を描きつつも、笑ってしまうようなシュルレアリスム的場面を挿入することで観る者の「悲観」を緩和し、どんな状況からでも人は生きていけるという前向きなメッセージとなっている。意図したものを遥かに超える情報量を感じさせる傑作。
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