クシーくん

哀愁のクシーくんのレビュー・感想・評価

哀愁(1940年製作の映画)
3.9
ヴィヴィアン・リー&ロバート・テイラーのカップルは本当に見栄えの良い惚れ惚れするような美男美女。

所謂すれ違いの悲恋を描いたドラマで、現代人から見ると非常にもどかしい部分もある。
それは単なるすれ違いのタイミングの悪さだけじゃなくて身分階級の差もあるんだろうし、何よりも作品全体にのしかかる戦争という重圧が彼らの運命を狂わせてしまった。二度の大戦に翻弄されたロバート・テイラーの草臥れきった表情に、戦争に対する静かな怒りと悲しみが伝わってくる。これを第二次大戦中に作るってのもなんだか凄い話。

ヴィヴィアン・リーは「風と共に去りぬ」の悪女スカーレットと同じ女優にはとても見えない。美しいだけじゃなくて本当に物凄い女優だったんだな~。善良で心優しい叔父上のさりげない一言が純情なマイラを傷つけるのが悲しい。

キティも友情に厚くて泣ける。「簡単に稼げる方法だ。……誰が言ったのか知らないけど、女の台詞ではないわね」
これぞ正しく「哀愁」というに相応しい名セリフ。

蛍の光に合わせて蝋燭の灯を消していくキャンドルライトクラブの下りはちょっとメロドラマ的過ぎるかなとも思ったが、後半の余りにも過酷な生活を前にした最後のロマンスとして余韻が残る名シーンなのだと気づかされた。

野暮は承知で、そもそも冒頭の空襲警報のシーンで二人が出会わなければ全く違った、お互いにそれなりに幸福な人生を歩めたのではないかと思う。至極当たり前のことだが、つまり出会ってしまうのが映画なんだとしみじみ感じる。
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