ベビーパウダー山崎

東京画のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

東京画(1985年製作の映画)
3.0
小津の世界を破壊したこの時代(80年代)もすでに過去で、ブラウン管テレビは処分され、タモリ倶楽部も終わった。パチ屋やゴルフの打ちっぱなしはあるにはあるが、いまの私たちには金も好奇心も枯れ果て、未知なる娯楽に傾ける時間や気力などもう何も残っていない。街も人も衰退し、日本はあと数年で消滅して海の底へと沈む。
厚田雄春が小津への愛を涙ながらに語るラストはとても感動的だが、マッチしていない黒黒とした髪型もだいぶ気になる。食品サンプルのくだりが小津映画リスペクトと同じぐらい無駄に長い。ヘルツォークやクリス・マルケルが文化を求めてTOKYOに集まっていた時代。ヴェンダースの新作は日本で役所広司と撮ったらしいが、表現者として今でも映すべき景色がまだあるというのか。小津の墓石に彫られた「無」。ヴェンダースのふしぎの国ニッポン探訪記。