theocats

蟹工船のtheocatsのレビュー・感想・評価

蟹工船(1953年製作の映画)
3.7
過酷・悲惨なのが分かり切っているだけにパッケージを見ても見る気にはなれず長らく回避。ようやく10年越しに気を奮い立たせてみた映画。苦笑

要は業突く張り資本家の下僕監督一味と、その下で奴隷労働をさせられる貧しい労働者たちとのいさかいが起こるまでの経過と、「憐れな」国家的解決方までを描いた「無知無力な者らの労働者エレジー」。

実は小林多喜二原作は知らないのだが、実際に北海道の開拓地でタコ部屋奴隷労働をさせられ、辛くも逃げ延び後に大企業社長となった人の自叙伝を読み身震いさせられていたので、蟹工船という全く逃げ場のない状況での「タコ部屋奴隷労働」の有様には他人事ではないリアリティを感じないわけにはいかなかった。

監督たちの残虐横暴さ非道さと、それに徐々に憎しみと怒りを募らせ、ついに暴動に到る労働者たちの有様は良く描けていたと思うが、惜しむらくは音声がよく聞き取れず、少なからず集中がスポイルされたことは残念だった。映像のブレはまだ許容範囲だったが、それでも見ずらいことに変わりがなかったのも併せて。
せめて字幕があれば良かったのだがと心から思う。

しかし、日本の代表的プロレタリアート文学を映像という形であれ目と心情に焼き付けることができたのは価値ある経験だったのは間違いない。
theocats

theocats