このレビューはネタバレを含みます
蟹工船での過酷な労働の日々の後、
監督に船員たちがクーデターを起こす話。
監督がわかりやすく横暴で、
船員たちを粗末に扱うだけでなく、
船医の言うことは聞かないわ、
近くの船が困っていても見殺しにするわ、
領海侵犯を命じるわ。
監督の無茶に船長が責任を
取らなきゃならないことを訴えられての
「取りゃあいい」はいっそ清々しいほどの
ヒールの台詞。
労働者の雑談の中で出てきた、
子どもがひとり死んで
またひとりできたからあいこと
いった内容の台詞を笑って言っており、
現代とは命の価値が違うことを
強く感じさせられた。
故に子ども船員たちがこんなにいるのも
さもありなんなのだろう。
個人の幸福と社会的な扱いが
現代以上に乖離していた時代。
今に通ずるブラック環境の
縮図のような舞台。
閉ざされた空間で命が脅かされる
ブラック具合だと横暴な権力者を
物理で倒さなければならないのは必然。
その後制圧されたが、
やった甲斐はあったはずと思いたい。
トークショーによれば
原作では違って、
希望のあるラストらしい。
つらい目に遭わされた従業員が
退職するだけでは変わらず、
また新たに入ってきた人が
使い捨てされるだけなのだから、
通報されたら労基が調査して、
ひどい実態が確認されたら
撃っていいことにするくらいになれば
労働環境のあり方が著しく変わるかもと、
自らの手で処したいと思った経験が
何度もある身としては夢想してしまう。
前半はスクリーンの中で
船が揺れるだけでなく、
船内の様子の場面では
全体が左右にゆらゆらと揺れることが多く、
酔って具合が悪くなってしまった。
蟹漁の厳しさに、
カニカマの誕生から
今に至る味や食感の発展は
素晴らしいことだと改めて思った。